「お前より良い条件かつ麗しく忠誠心もある素晴らしい女性と巡り会えた」などと言われ婚約破棄されたのですが、そんな私の前に現れたのは……。

四季

文字の大きさ
1 / 11

1話「婚約破棄された、しかし翌朝……」

しおりを挟む

 私カレッタは今日婚約破棄された。

 半年くらい前から婚約していた彼アポツティという青年がいたのだが、彼は「お前より良い条件かつ麗しく忠誠心もある素晴らしい女性と巡り会えた。だからもうお前は要らない。よって、婚約は破棄とする」などと言って私との関係を一方的に終わらせた。

 まったく……。
 どうして私がこんなややこしい目に遭わなくてはならないのか……。

 でも、これが運命なら仕方のないことなのかもしれないとも思う。

 だから私は婚約破棄を受け入れて家へ戻った。

 それから、家にいた両親にそのことを話すと、驚かれはしたものの理解してもらうことができた。そして、またしばらく実家にいることを許してもらえて。おかげで私は居場所をなくさずに済んだ。

 自室へ戻って。

 姿見に映る長い金の髪を目にすれば、かつてそれをアポツティが褒めてくれていたことを思い出す。

 ああ、あの頃は幸せだったな……。

 こみあげる寂しさと切なさ。

 私たちはどうして上手くいかなかったのだろう。どこで何を間違えたのか。もしも何か違ったことをしていたら、私たち二人の未来は何かもっと幸せなものへと変わっていたのだろうか。

 はぁ、と溜め息をつけば、その音は宙に溶けて消えた。

 ――だがその翌朝。

「カレッタ! 起きてる!?」

 母が自室に駆け込んできた。

「え……」
「良かった、ちょっと綺麗にしてから出てきて!」
「え? え?」

 何やら慌てている様子の母。

 ……これは一体何が起きたのだろう?

「取り敢えず、服着替えて出てきてちょうだい!」
「う、うん」

 何かあったのだろうか?
 よく分からないが……取り敢えず着替えれば良いのか。

 事情なんて分からないまま、寝巻きから家着に着替えてリビングへ。

 するとそこには一人の青年がいた。

 ……誰?

「初めまして、カルセドラと申します」

 高級そうな濃紺のベストが印象的な格好をしている。
 良い家の出であることを感じさせるような立ち居振る舞いだ。

「は、初めまして。カレッタと申します」

 カルセドラは軽く一礼してからその整った面に笑みを浮かべる。

「やはり、こうして近くで目にしてもお美しい」
「え……何ですか急に」
「以前、王家主催の晩餐会にて、貴女の姿をお見かけしたのです。それから気になっていて」
「王家主催……ああはい、確か、半年くらい前……」

 もう少し前になるので記憶は若干怪しい。でも確かに王家主催の晩餐会に出席はした。あれは、参加する予定だった親戚のおばさんが急に体調不良になったとかで、私が代わりに参加したのだ。

「しかし、貴女には婚約する予定の相手がいましたね」
「はい、そのちょっと後くらいに」
「なのでお声がけはできずにそのまま……だったのですが、婚約が破棄になったと耳にしまして」
「はい……昨日です、お恥ずかしい……」
「その情報を得て、最後のチャンスだと思い伺ったのです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる

きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。 穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。 ——あの日までは。 突如として王都を揺るがした 「王太子サフィル、重傷」の報せ。 駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」 婚約者として五年間尽くしたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。 他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい

神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。  嘘でしょう。  その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。  そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。 「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」  もう誰かが護ってくれるなんて思わない。  ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。  だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。 「ぜひ辺境へ来て欲しい」  ※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m  総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ  ありがとうございます<(_ _)>

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

処理中です...