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4話「不思議なお茶会?」
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王子であるカルセドラに会いに城へ向かった私は、かなり緊張して今にも倒れそうなくらいであったが、何とか彼が待っているという部屋にまでたどり着くことができた。
「こんにちは」
取り敢えず挨拶をすれば。
「こんにちは! またお会いできて嬉しいです」
彼は爽やかに返してくれた。
といってもまだ会うのは二度目なのだ。それほど深い関係にまでは至っていない。でも、初対面でないだけまし、とも捉えられる。これが初対面だったらきっともっと緊張して弱っていたと思うから。
「今日は貴女にぴったりなお茶を準備してみたんですよ」
「ぴったり……?」
「はい! ティーカップへ移す時に虹色になる珍しいものです!」
「えええー……」
それがぴったりって……どういう意味~?
「ほら、もうすぐそのタイミングになりますから! 一緒に眺めましょうよ」
「ええっ」
「取り敢えず、席へどうぞ」
「あ、はい……ありがとうございます」
空いている席へ腰を下ろす。
いや、やはりまだ緊張している。
どうしても震えそうになる。
さすがに震えているのはおかしいのでそう見えないよう気をつけてはいるのだけれど。
そこへやって来る係の女性。
その女性の手が触れている透明なポットには薄い黄色の液体が入っている。それが傾けられれば、小さな口かその液体が溢れて、やがて下にあるティーカップへと落ちる。その瞬間、液体の色が変わった。
「わっ」
パステルカラーが広がって、優しいハーブの匂いが漂う。
「綺麗……」
思わずそんな感想を述べてしまった、何も聞かれていないのに。
「カレッタさんらしいと思いません?」
カルセドラの口から出てきたのは意外な言葉だった。
「僕、それを見て貴女の顔を思い出したんです。それで、お見せしたいな、と。で、今日までに揃えておきました」
「そうだったのですか……」
「少しは気に入っていただけましたか?」
「はい、綺麗です」
色は溶けて混じり、やがて、普通のお茶のような赤茶色に戻った。
本当に一瞬のことだった。
それはまるで魔法か奇跡かのようで。
でも、こうして見られて良かった。
「とても……幻想的でした」
この世界にはきっとまだ私の知らないたくさんの不思議なものやことがあるのだろう。
それを一つ学べてよかった、そう思う。
「それは良かった」
「ありがとうございました。では私はこれで帰りま――」
「いやいやいや!」
立ち上がりかけて、止められる。
「え?」
これを見せるのが今日の目的だったのではなかったの?
「待って! くださいよ! ここからじゃないですか!」
……それだけというわけではなかったみたいだ。
ということは私はまだここにいて良いのか。
「いえ、ですから、これを見せたくて誘ってくださったのでは?」
「それはそうですけど、でも、それだけのためにお誘いしたのではありません!」
「あ、そうですか。ではもう少しここに」
「ふう……良かった、嫌われたかと思いました……」
ポットを手にした女性は静かにその場から離れていった。
「勘違いしてすみませんでした」
「いえいえ」
「素敵なものを見せてくださって、ありがとうございました」
「そう言っていただければ嬉しいです。ああそうでした、カレッタさん、お菓子もありますよ」
言って、カルセドラは、先ほど一旦離れていった女性に指示を出す。
すると女性が今度は箱を持ってきてくれて。
「カレッタさん、蓋を開けてみてください」
「はい……」
装飾が施された箱の蓋部分に恐る恐る手を伸ばし、ゆっくりそれを持ち上げると――。
「これ……」
そこには色とりどりのクッキーが詰まっていた。
「せっかくなので作らせてみました」
「クッキー、ですよね」
「やはり色鮮やかなのが良いかなと」
「これまた虹色ですね」
「ええ、そういうイメージなんです、僕の中のカレッタさん」
「こんにちは」
取り敢えず挨拶をすれば。
「こんにちは! またお会いできて嬉しいです」
彼は爽やかに返してくれた。
といってもまだ会うのは二度目なのだ。それほど深い関係にまでは至っていない。でも、初対面でないだけまし、とも捉えられる。これが初対面だったらきっともっと緊張して弱っていたと思うから。
「今日は貴女にぴったりなお茶を準備してみたんですよ」
「ぴったり……?」
「はい! ティーカップへ移す時に虹色になる珍しいものです!」
「えええー……」
それがぴったりって……どういう意味~?
「ほら、もうすぐそのタイミングになりますから! 一緒に眺めましょうよ」
「ええっ」
「取り敢えず、席へどうぞ」
「あ、はい……ありがとうございます」
空いている席へ腰を下ろす。
いや、やはりまだ緊張している。
どうしても震えそうになる。
さすがに震えているのはおかしいのでそう見えないよう気をつけてはいるのだけれど。
そこへやって来る係の女性。
その女性の手が触れている透明なポットには薄い黄色の液体が入っている。それが傾けられれば、小さな口かその液体が溢れて、やがて下にあるティーカップへと落ちる。その瞬間、液体の色が変わった。
「わっ」
パステルカラーが広がって、優しいハーブの匂いが漂う。
「綺麗……」
思わずそんな感想を述べてしまった、何も聞かれていないのに。
「カレッタさんらしいと思いません?」
カルセドラの口から出てきたのは意外な言葉だった。
「僕、それを見て貴女の顔を思い出したんです。それで、お見せしたいな、と。で、今日までに揃えておきました」
「そうだったのですか……」
「少しは気に入っていただけましたか?」
「はい、綺麗です」
色は溶けて混じり、やがて、普通のお茶のような赤茶色に戻った。
本当に一瞬のことだった。
それはまるで魔法か奇跡かのようで。
でも、こうして見られて良かった。
「とても……幻想的でした」
この世界にはきっとまだ私の知らないたくさんの不思議なものやことがあるのだろう。
それを一つ学べてよかった、そう思う。
「それは良かった」
「ありがとうございました。では私はこれで帰りま――」
「いやいやいや!」
立ち上がりかけて、止められる。
「え?」
これを見せるのが今日の目的だったのではなかったの?
「待って! くださいよ! ここからじゃないですか!」
……それだけというわけではなかったみたいだ。
ということは私はまだここにいて良いのか。
「いえ、ですから、これを見せたくて誘ってくださったのでは?」
「それはそうですけど、でも、それだけのためにお誘いしたのではありません!」
「あ、そうですか。ではもう少しここに」
「ふう……良かった、嫌われたかと思いました……」
ポットを手にした女性は静かにその場から離れていった。
「勘違いしてすみませんでした」
「いえいえ」
「素敵なものを見せてくださって、ありがとうございました」
「そう言っていただければ嬉しいです。ああそうでした、カレッタさん、お菓子もありますよ」
言って、カルセドラは、先ほど一旦離れていった女性に指示を出す。
すると女性が今度は箱を持ってきてくれて。
「カレッタさん、蓋を開けてみてください」
「はい……」
装飾が施された箱の蓋部分に恐る恐る手を伸ばし、ゆっくりそれを持ち上げると――。
「これ……」
そこには色とりどりのクッキーが詰まっていた。
「せっかくなので作らせてみました」
「クッキー、ですよね」
「やはり色鮮やかなのが良いかなと」
「これまた虹色ですね」
「ええ、そういうイメージなんです、僕の中のカレッタさん」
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