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後編

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 ◆


 婚約破棄後、私は、誰かと結婚することは諦めた。

 もしまた同じようなことになったら。
 ついついそう考えてしまって。
 そうなると誰かと結ばれるために動く気にはなれなかったのだ。

 私は魔法で生きていこう。
 人々のために働こう。

 そう決意して。

 便利屋の仕事により一層力を注ぐようになっていった。


 ◆


 あれから十年、私は今、便利屋の店主として日々働いている。

 営んでいた親は生きてはいるが既に引退した。今では時折手伝ってくれる程度で。基本的には私が中心となって店主として働いている。最初は上手くやっていく自信がなかったのだが、いざ始めてみると案外上手くいって。元々の常連客が温かく関わってくれたということもあり、活動を順調に進めていけた。

 困っている人、泣き出しそうな人、そういった人たちがこの力によって笑顔になる。

 それが何より嬉しくて。

 だからこの仕事は私にぴったりだと思う。

 そうそう、そういえば。

 オーリジの母親はあの後喧嘩した旧友からかけられた呪いによって体調を崩し、それからしばらくして、亡くなったそうだ。
 呪いを消す魔法治療を受けたほうが良い、と医師は助言したそうだが、彼女は頑なにそれを拒んでいたそうだ。
 穢れが移るから魔法治療は絶対に嫌、と、ずっと言い張っていたとのことである。

 少しでも主張を落ち着けたなら助かったかもしれないのに……。

 でも、彼女にとっては、死より魔法が嫌だったのだろう。

 ならばこれで良かったのかもしれない。


◆終わり◆
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