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前編
しおりを挟む「実は話があってな」
「何ですか?」
「俺、君との婚約は破棄すると決めたんだ」
「えっ」
その日は突然やって来た。
信じられないくらい急に訪れる、終わりを告げられる瞬間。
心の奥まで硬直する。
「実はさ、もっと好きな人ができてしまったんだ」
「もっと好きな人……?」
「誰だと思う? 君も知っている人だよ、女性で」
「私も知っている人ですか……?」
「そうそう、当てられる?」
「すみませんが、分かりません」
「じゃあ教えてあげよう!」
いらない……。
「君の親友、エリーニカさんだよ!」
衝撃を受ける。
彼女の名が出てくるなんて。
嘘としか思えず。
どうしてもそれが事実なのだと理解できない。
エリーニカは私の親友である女性だ。
なぜここで彼女が出てくる?
「そんな、どうして……どういうこと、ですか?」
「実は前からたまにだが彼女と会っていたんだ。で、俺はついに決意した。君を捨て、彼女を選ぶと」
エリーニカは良い女性だった。いつも私の話を聞いてくれていたし。だからまさか、彼女が裏でそんなことをしていたなんて。とても信じられないし、信じたくないくらいだ。
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