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前編
しおりを挟む「お前ってさぁ、料理とかできる?」
ある日のこと、一緒に過ごしていたら、婚約者の彼ルレイが質問してきた。
「ええ、少しだけ」
「へぇ~! できればちょっと作ってみてくれね?」
「え、どうしたの急に」
「いや、ただ、食べたいなーって思ってさ」
私は料理人ではない。ただ、料理をしたことがないというわけではないので、やろうと思えばできる。前に親に作ってみた時には褒められた、それゆえ、驚くほど美味しくないということはないだろう。
「じゃあ作ってみるわね?」
「え! いいの!」
「ええ」
「マジ!? よっしゃあ! じゃ、よろしくぅーっ!」
で、翌日、料理を作っていってルレイに出したのだけれど。
「まず」
一口食べて、彼はそう言った。
冷ややかな視線を向けてくる。
「最悪だわ。婚約、破棄するわ」
投げられたのは心ない言葉と視線。
胸を射られたかのように。
見えないものだが心に激痛が走ったような感覚があった。
「え……そんな、ちょ……待って、どうして……」
「婚約は破棄。いいな? じゃ、さよなら」
「お願い! 何がどう駄目だったのか、せめてそれだけでも教え――」
「うるせえよ、消えろや」
こうして私は切り捨てられた。
この瞬間ほどショックだった瞬間を、私は知らない。
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