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後編
しおりを挟む「貴女がいなければ! 貴女の髪が台無しになれば! 私はエークリス様の一番になれるの! 婚約できるのよ!」
女性は急に叫び出した。
「死ねとは言わないわ、けど、今すぐエークリス様の前から去ってちょうだい!」
「それは……できません」
「どうしてよ! 貴女はもう髪しか愛されていないのに!」
「彼はいつも優しくしてくれていますよ? そもそも、前提がおかしいのではないですか? 貴女が自分が一番だと思っているのが勘違いなのではないですか?」
すると女性は噛み付こうとしてきた。
咄嗟に足が動いて女性の顔面を踏みつける形となる。
たまたまだけれど、ちょうど良いタイミングで攻撃が入った。
「ぐへぼ」
負けるものか、こんな女に。
エークリスには後で話を聞こう。
彼女とどういう関係だったのか、彼女とこれまでどういうことしてきたのか――じっくりと、彼が息苦しくなるまで、深く聞かせてもらおう。
今はこの女を押さえ込むことだけを考えたい。
ちょうどその時。
「どうした!? 何かあったのか!?」
物音で異変に気づいた父が部屋へやって来て。
「何をしているんだ!!」
それによって私は女性を地域の治安維持隊へ突き出すことに成功した。
◆
あの後女性は牢屋に入れられたが、ある日の晩食事を持ってきた係の者に急に襲いかかり耳に噛み付いて脱走を図ったそうで、その結果『問題あり』という認定を受けてしまい処刑されたそうだ。
そして、私とエークリスの婚約も破棄となった。
エークリスと女性の関係は思ったより進展していた。
それこそ私とエークリスの関係以上に。
二人は既に一般的なイメージを大きく飛び越えたほどの関係性に発展していたのである。
友人とか、親友とか、そういう段階ではなかった。
そのため付き合ってゆくのは無理という判断になって、終わりを迎えてしまったのである。
でもそれで良かったと思っている。
だってそんな穢れた人と共に生きてゆくなんて嫌だから。
だから一度リセットして。
そこからまた、自分が望むような新しい物語を紡いでゆけばいい。
◆終わり◆
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