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後編
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一週間後、隣国が大雨に見舞われたことを聞いた。
隣国は比較的穏やかな気候の国だ。それだけに、大雨に見舞われたというのは驚きだった。もしかしたら私のせいでは、と思ったが、気のせいと思うことにした。
それから数日、先日の大雨によって多くの被害が出たとの情報を得た。
以前であれば我が国も援助しただろう。これまではそうやって協力を重ねてきた。けれども、今回だけは、我が国は救いの手を差し出さなかった。婚約破棄うんぬんのごたごたがあった直後で、険悪になっている時期だったから。
「そんなことになっているなんて……信じられないわ」
「そうですよね。ずっと穏やかな国だったのに、どうしてしまったのでしょうか」
「ざまぁ、とは、さすがに言えないわね。気の毒だもの」
「それは……そうですよね。国の民に罪はありませんから……」
この大雨災害で、隣国の第二王子第三王子第一王女が落命したそうだ。
もしあのまま王子の婚約者としてあそこにいたら、私も命を落としてしまっていたかもしれない。いや、落命せずとも、きっと怖い思いをしていただろう。そう考えると、とても恐ろしい。
◆
それからというもの、隣国はことあるごとに災難に見舞われるようになった。
毎年季節を問わず降りかかる自然災害。実りは減り、民は飢え、国力も徐々に落ちてゆく。そうなると、近隣の国が目をつける。乗っ取るなら今、と言わんばかりに、周辺国が国へ攻め込む。
そうなると、さらに混沌とし始めてしまう。
基礎的な力を失った国が攻められれば、力強く抵抗することなど不可能で。隣国はそのまま、あっという間に占領されてしまった。
「もうお聞きになりましたか? あの方、亡くなられたとか」
「……えぇ、聞いたわよ」
国王は捕らえられ、牢へぶち込まれたらしい。
また、次世代を担う可能性のある第二王女と第一王子は、処刑されたそうだ。
「あそこにいたら大変なところでしたね……」
「えぇ……」
共に歩める道があれば良かったのに。そう思ったこともあった。何がすべてを壊してしまったのだろう、と考えた瞬間も、なかったわけではない。
だが、あの婚約破棄が、結果的に私を救った。
おかげで生き延びられた。
◆終わり◆
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