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二人の危機
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木々が生い茂る崖の下、陽の光さえ僅かしか届かない谷底のような場所にて、ウタとリベルテは敵に囲まれていた。
敵は人間の男性だが、皆、筋肉が隆起したパワータイプと思われるような者たちである。彼らはほとんど防具をつけていない。が、武器は手にしている。ただし、持っている武器の種類に統一感はなく、斧であったり刃物であったりと様々だ。
「ちょっとリベルテ……これ、一体どうするつもり?」
「倒すしかございませんね」
「倒すって……まさか二人で? 無理よ!」
リベルテは術書を持ってはいるが身体は大きくない。ウタは拾った太めの枝を握ってはいるが戦闘経験はまったくなし。そんな二人だけで屈強な男たちを倒せる可能性は低い。一方敵の男たちはというと、「うっひょー、いいねぇー! 娘さん二人!」「楽しみが無限やなぁ」「うるっふっひゅっよーっ!」などと口ぐちに妙なことを言っている。既に勝つ気満々である。
刹那、背後から出現した一人がウタの背中に襲いかかろうとするーーそれに気づいたリベルテはウタの身体を突き飛ばしたが、それにより右肩を斬られ負傷してしまった。
愕然とするウタ。
しかし、その時のリベルテは、彼女に意識を向けてはいなかった。斬りかかってきた男を睨んだまま、炎の術を放つ。その炎によって、斬りかかってきた男は逃げ出した。
とはいえまだすべてが終わったわけではない。
いつでも仕留められる、とでも言いたげな顔で、残りの男たちが二人を見ている。
「ひとまず無傷で何よりでございます。万が一貴女に傷がついたりしましたら、主に怒られてしまいますから」
「怪我してるわ、そんなこと言ってる場合じゃ……」
「この程度、平気でございますから、そのような顔をなさらないで下さいませ。リベルテはこう見えてもそこそこ経験豊富でございまーーっ!?」
リベルテが言い終わる直前、上から何かが落ちてきた。
場所が場所だから岩でも落下してきたのかと思うウタたちだったが、落ちてきたそれは実際には岩ではなくて。人間、それもウタがよく知る、ウィクトルであった。
ウタたちと男たちの間に入るように登場したウィクトルは、細身の剣の持ち手に手を添えている。
「待たせてすまない」
ウィクトルの声に、ウタとリベルテは安堵したような顔つきになった。
「後は私に任せてくれ。すぐに殲滅する」
こうして、敵の男たちはウィクトルによって片付けられ、ウタとリベルテは命を落とすことなく助かったのだった。
◆終わり◆
敵は人間の男性だが、皆、筋肉が隆起したパワータイプと思われるような者たちである。彼らはほとんど防具をつけていない。が、武器は手にしている。ただし、持っている武器の種類に統一感はなく、斧であったり刃物であったりと様々だ。
「ちょっとリベルテ……これ、一体どうするつもり?」
「倒すしかございませんね」
「倒すって……まさか二人で? 無理よ!」
リベルテは術書を持ってはいるが身体は大きくない。ウタは拾った太めの枝を握ってはいるが戦闘経験はまったくなし。そんな二人だけで屈強な男たちを倒せる可能性は低い。一方敵の男たちはというと、「うっひょー、いいねぇー! 娘さん二人!」「楽しみが無限やなぁ」「うるっふっひゅっよーっ!」などと口ぐちに妙なことを言っている。既に勝つ気満々である。
刹那、背後から出現した一人がウタの背中に襲いかかろうとするーーそれに気づいたリベルテはウタの身体を突き飛ばしたが、それにより右肩を斬られ負傷してしまった。
愕然とするウタ。
しかし、その時のリベルテは、彼女に意識を向けてはいなかった。斬りかかってきた男を睨んだまま、炎の術を放つ。その炎によって、斬りかかってきた男は逃げ出した。
とはいえまだすべてが終わったわけではない。
いつでも仕留められる、とでも言いたげな顔で、残りの男たちが二人を見ている。
「ひとまず無傷で何よりでございます。万が一貴女に傷がついたりしましたら、主に怒られてしまいますから」
「怪我してるわ、そんなこと言ってる場合じゃ……」
「この程度、平気でございますから、そのような顔をなさらないで下さいませ。リベルテはこう見えてもそこそこ経験豊富でございまーーっ!?」
リベルテが言い終わる直前、上から何かが落ちてきた。
場所が場所だから岩でも落下してきたのかと思うウタたちだったが、落ちてきたそれは実際には岩ではなくて。人間、それもウタがよく知る、ウィクトルであった。
ウタたちと男たちの間に入るように登場したウィクトルは、細身の剣の持ち手に手を添えている。
「待たせてすまない」
ウィクトルの声に、ウタとリベルテは安堵したような顔つきになった。
「後は私に任せてくれ。すぐに殲滅する」
こうして、敵の男たちはウィクトルによって片付けられ、ウタとリベルテは命を落とすことなく助かったのだった。
◆終わり◆
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