ミルナの恋路 ー迷子編ー

四季

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ミルナの恋路 ー迷子編ー

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 昼間の森の中、斧兵部隊は敵国の兵と交戦していた。

 戦闘能力は高くないミルナだが、斧兵部隊に入っていることもあり、味方の兵たちと共に行動していた。しかし、途中でうっかり味方の兵たちを見失ってしまって。そうしてミルナは、森の中に一人佇むしかない状況に陥ってしまっている。

「最悪……。よりによってこんなところで皆とはぐれるなんて……」

 ミルナは顔をしかめながら思いを漏らしてしまう。

 周囲には草木しかない。人の姿など見当たらないし、声が聞こえてくるでもない。ただ、空は悲しくなるほどに澄んでいて、だからなおさら、ミルナは溜め息をつきたくなる。

 それから数秒が経過した頃、ミルナの耳に植物を掻き分けるような乾いた音が飛び込んできた。

 味方の兵が探しに来てくれた、と安堵したのも束の間。草を掻き分けて現れたのは見覚えのない顔。得体の知れない男の登場に、ミルナの全身に恐怖感が走る。

「あぁ? 女? 何でこんなところに。まぁいい、捉えて玩具にでもーー」

 言いながら、男は持っていた剣でミルナに襲いかかろうとする。
 抵抗する術を持たないミルナは「もう駄目か」と諦めかけた。
 だが、次の瞬間、彼女に襲いかかろうとしていた男の剣は宙に舞い上がった。男とミルナの間に駆け込んできたルジェベリアが、斧で弾き飛ばしたのだ。

「私の部下に触るな、野蛮人」

 ルジェベリアは斧を構えたまま男を睨む。
 その迫力に男は逃げていった。

「まったく。乙女をいきなり襲うとは」

 男が逃げたことを確認すると、ルジェベリアは斧を下ろす。それから、片手の甲で、頬についていた返り血と思われる赤いものを拭う。

「怪我はないか?」
「平気。それより、ありがとう。……助けに来てくれて」
「迷わないよう気をつけた方がいい」
「うん……次からは気をつける」

◆終わり◆
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