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一度は死のうとした私でしたが、幸せになれました。今はもう、死を望みません。むしろこれからも夫と共に幸せに生きていきたいです。
しおりを挟む「君のことはもう愛せない」
告げられた言葉はあまりに冷ややかで。
「婚約は破棄する」
私の胸を貫いた。
言葉という、ひとふりの剣。
◆
早いもので、あの婚約破棄から十年が経った。
愛していた人に捨てられたあの日、私はこの命を捨てようとした。
けれどもそれは叶わず。
たまたま通りかかった一人の青年によって制止され、私はこの世に留まらなくてはならないこととなった。
「ほら、言ってたケーキ! 買ってきたよ」
その青年が、私の今の夫だ。
色々あって私たちは結婚した。
あんな形での出会いではあったけれど、今は二人穏やかに暮らしている。
「あ!」
少しかえるのような顔立ちの彼。
でもとても心優しく。
どんな時も思いやりがある。
それに、実はその顔立ちも好きなのだ。
私の好みにははまっている。
「食べたいって言ってたよね」
「そ、そうなの。気になっていたの、実は。でも……どうして?」
「食べさせたいなーって思って」
「いいの……?」
「もちろん! 妻には笑っていてほしいって、誰も思うでしょ」
「そう……嬉しい、ありがとう本当に」
ちなみに、かつて私を捨てた彼は、あの後別の女性と結婚するも自宅で賊に襲われ殺められたそうだ。
これは知人ルートで得た情報である。
「じゃあお茶を淹れるわ」
「ありがとう~」
「ああ嬉しい、わくわくするわ。食べてみたかったの……かえるケーキ」
◆終わり◆
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