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1話「ずっとこのままでいられると思ってた」
しおりを挟む私、絵ノ宮琴美は、現代日本で普通の高校生として暮らしていた。
得意なことなんてあまりなかった。平凡だった。でも幸い良い両親のもとに生まれられて、おかげでそれほど困らずに過ごせていた。当然嫌なことだってありはしたけれど、嫌なことばかりの人生だったわけではないし、むしろ嬉しいことや良いことだって多く経験してきた。
そんな私は、ある日の下校中。
「え」
道を一人で歩いていたところ、急にアスファルトの地面が光り出して。
「何、これ……」
やがて大きくなってゆく光。
それに包まれて。
そのまま私は意識を失った――。
◆
「召喚に成功しました!」
そんな声がして、目覚めた。
その時私はこれまでに目にしたことのない場所にいた。
しかも草原のような場所。
下校中だったはずなのに、明らかに帰り道とは異なる場所が視界に入る。
髪に触れれば黒、身体も特に変質はしていない感じ。一応死んだというわけではないようだ。恐らく、だが、私の身は私のそれのままのようである。
その時、ローブの男が近づいてきた。
「ああ! 我らを導く聖女よ! よく来てくださいました!」
「え、あの……」
「どうか、これから我らをお導きください!」
何を言っているんだ? この人は。
黙ったまま混乱する。
だってそうだろう? 私はただの高校生、聖女なんかではない。なのに目の前にいる彼は私を聖女と呼んでいる。そして、崇拝するような視線を向けてきているのだ。これは何だ? 夢か何かか? あるいは、ドラマか何かの撮影? でもそういうことなら先に説明があるだろうし、いきなりシーンを開始するなど違和感しかない。
「まずはお名前を!」
「絵ノ宮琴美……です、けど」
言えば、不思議そうな顔をされてしまう。
「エノ、ミヤ……?」
「はい」
「続きもありましたよね?」
「琴美です」
「こ、ココ? ココ……ミ……?」
「琴美、です」
「コトミ!」
「はい、そうです」
そんなやり取りを経て。
「エノミヤコトミ様! 貴女こそ、我らを導いてくださるお方です!」
「いや違いますただの高校生です」
「いいえ! それはまだ貴女が理解できていないだけのこと。我らはこうして数十年に一度聖女を召喚するのです! その女性が代々この国を護ってくださっているのですよ!」
ローブの男は熱弁をふるう。
意味が分からない……。
まず聖女って何?
それに、数十年に一度召喚っていうのも、どういうこと?
謎だらけだ。
「城へ戻りましょう! 国王陛下も喜ばれるはずです!」
「えええ……」
「道中、色々説明いたしますね!」
「あの……帰らせてください、今夜楽しみにしているドラマがあるんです、なので解放してください」
駄目もとで言ってみれば。
「帰る? それは無理ですよ、二度と」
ローブの男はそれが当たり前であるかのように言ってきた。
さらに。
「我々には召喚することしかできませんので、すべての代においてですが聖女様にはこの国で一生を終えていただいております」
そんなことまで言われて。
「え……え、ええええ!?」
思わず大声を出してしまった。
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