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前編
しおりを挟む「あなた、どこまでも地味な女ね。我が家に相応しいとは思えないわ」
思えば、三つ年上の男性ルイゼントと婚約してから、ことあるごとに彼の母親に絡まれてきた。
初めて挨拶をした時、睨まれ、ごみを見るような目をされた。
そしてそれからも会うたびに嫌みを言われ。
彼の家へ行った際には家事をするよう強制されたこともあった。
で、今もまた、ルイゼントの母親に絡まれている。
だが今日の彼女はいつもとは少々異なった表情を顔に浮かべているような気がする――どこか、決意のようなものを抱えているような、そんな表情。
「あなたが我が家の女になるなんて、想像するだけでも恐ろしいわね」
「そうですか……」
母親は腕組みして顎を持ち上げている。
まるで私を階級が違う奴隷として見ているかのよう。
確かに私はよその女だけれど……だからといって地位が低いというわけではないはず。
なのにどうしてそんな視線を向けられなくてはならないのか……。
「ということで、我が息子とあなたの婚約は破棄とするわね」
「えっ!?」
「何かしら? 当たり前でしょう、相応しくない女を排除するのは母のつとめよ」
私は一体何者なのだろう。
奴隷か何かなのだろうか。
何もしていないというのに、なぜこんなにも見下されなくてはならないのか。
「ま、待ってください……さすがにいきなり過ぎでは……」
「はい? 何を言っているの? 無駄よ、今さら何を言っても」
「……それは、ルイゼントさんも納得していますか?」
「当たり前じゃない、あの子は私が言ったことには絶対反対しないわ」
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