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前編

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「お前ってさ、ほーんと、ダサいしブサいし最低女だよな」

 私の婚約者ダービンはいつもこんな調子だ。
 ことあるごとに私の悪いところを見つけては、それを実際に言葉にして直接伝えてくる。

 陰口を叩く人よりかはましなのかもしれないけれど——それでも良い気はしない。

 だが、この日は、いつもとは違っていた。

「あのさ、婚約破棄するわ」
「え」
「はぁ? お前みたいなのが俺と結婚できるって本気で思ってたのか? だとしたら馬鹿の極みってやつだな。あーあ、呆れる」

 いつものただの悪口とはまったくもって違う種の発言。

 しかし彼の顔は真剣そのもので。
 冗談ではなさそうだった。

「……そうですね、分かりました。では、私はこれで失礼することにします。……さようなら、ダービンさん」
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