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前編

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「お前との婚約、破棄させてもらう」

 ある日のこと。
 婚約者ヴィクテアはそんなことを言ってきた。

 もっとも、いきなりそんなことを言うなんて、まったくもって理解できないが。

「理由はありますか? なぜですか?」
「知るか」
「教えてください」
「うるさいなぁ! とっとと去れよ!」

 こうして私たちの関係は終わった。

 それにしても酷い。ろくな理由もなく一方的に婚約破棄するなんて。せめて少しくらい前もって言ってくれれば良かったのに、気に食わないところがあるなら説明すればいいのに、そう思わずにはいられない。

 でももうすべては終わったことだ。

 考えないようにしよう。
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