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後編
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「あの……王女、何を?」
エリアスは戸惑った顔をして尋ねてくる。隠そうと努めているようだが、動揺しているのが簡単に分かる。
意外と分かりやすいタイプなのね。親近感が湧いてきたわ。
調子に乗った私は思いきって彼の上半身に腕を絡め抱き締める。
「あ……あの……」
エリアスはオロオロする。何だか意外と可愛らしい。
「私はこういう役割では……」
彼は両腕を広げ、私の体に触れないようにしている。
「どうして触らないの?」
「王女のお体に触れるなど、ばちが当たります」
「ギューってしてちょうだい」
「……すみません。私にはできません」
「案外初々しいのね。いいわ、じゃあ命令。ギューってしてちょうだい」
母は早くに亡くなった、父は王の仕事で忙しい。だからこんな風に誰かの傍にいる経験はあまりしたことがない。
エリアスはまだ躊躇っている様子だ。
「触るのが嫌なの?」
追い討ちをかけるように言ってみる。
「い、いえ。そんなことはありません」
「じゃあギューってして」
「……分かりました」
ようやく観念したようだ。
「では少々失礼します」
いやいや、気にしすぎでしょ。そこまでたいしたことじゃないわ。
彼の腕が体に触れる。とても温かかった。
普通の家に生まれていれば親に抱き締めてもらえたのかな——なんて一瞬考えた。変よね。こんなに恵まれているのに。
「温かいわ」
「こんなご用件だったとは、さすがに驚きました」
「私、変よね。分かってる」
「いいえ、そんなことはありません。とても魅力的な方です」
え? 待って、今。
「貴女に仕えられて光栄です」
……やっぱり気にしないでおこう。
それからしばらくして、私とエリアスは体を離した。
「これでちょっとは親睦を深められたかな……」
言いつつ彼を改めて見ると、背中の羽が顕わになっていた。さっきまでなかったのに。
「羽が出てるわ!」
思わず指を差して言ってしまった。
「えっ!?」
きっと気が緩んで無意識に出てしまったんだわ。
「折角だし、羽をマッサージしてあげましょうか?」
私は気紛れで提案するが、エリアスはこれには素早く拒否の意を示した。
「いえ! 結構です!」
恐ろしいほどの速さで後ろ向けに進んでいくエリアス。
……そんなに嫌なもの?
羽は私たち天使にとってはかなり大切なところ。無闇に曝したくないのは分かるが、何もそんなに嫌がらなくてもいいと思うのだが。
ちなみに羽マッサージ、私は大好きよ。
「分かった分かった、しないわよ。そんなに怯えた顔をしないでちょうだい」
今日の中で一番派手な表情がここで出るとは。分からないものね。
「つい……失礼しました」
「いいのよ。気にしないで」
そう言って二人で笑った。
これからはずっとこんな風に遊べるのね。なら少しは私の退屈もましになるかも。
◇終わり◇
エリアスは戸惑った顔をして尋ねてくる。隠そうと努めているようだが、動揺しているのが簡単に分かる。
意外と分かりやすいタイプなのね。親近感が湧いてきたわ。
調子に乗った私は思いきって彼の上半身に腕を絡め抱き締める。
「あ……あの……」
エリアスはオロオロする。何だか意外と可愛らしい。
「私はこういう役割では……」
彼は両腕を広げ、私の体に触れないようにしている。
「どうして触らないの?」
「王女のお体に触れるなど、ばちが当たります」
「ギューってしてちょうだい」
「……すみません。私にはできません」
「案外初々しいのね。いいわ、じゃあ命令。ギューってしてちょうだい」
母は早くに亡くなった、父は王の仕事で忙しい。だからこんな風に誰かの傍にいる経験はあまりしたことがない。
エリアスはまだ躊躇っている様子だ。
「触るのが嫌なの?」
追い討ちをかけるように言ってみる。
「い、いえ。そんなことはありません」
「じゃあギューってして」
「……分かりました」
ようやく観念したようだ。
「では少々失礼します」
いやいや、気にしすぎでしょ。そこまでたいしたことじゃないわ。
彼の腕が体に触れる。とても温かかった。
普通の家に生まれていれば親に抱き締めてもらえたのかな——なんて一瞬考えた。変よね。こんなに恵まれているのに。
「温かいわ」
「こんなご用件だったとは、さすがに驚きました」
「私、変よね。分かってる」
「いいえ、そんなことはありません。とても魅力的な方です」
え? 待って、今。
「貴女に仕えられて光栄です」
……やっぱり気にしないでおこう。
それからしばらくして、私とエリアスは体を離した。
「これでちょっとは親睦を深められたかな……」
言いつつ彼を改めて見ると、背中の羽が顕わになっていた。さっきまでなかったのに。
「羽が出てるわ!」
思わず指を差して言ってしまった。
「えっ!?」
きっと気が緩んで無意識に出てしまったんだわ。
「折角だし、羽をマッサージしてあげましょうか?」
私は気紛れで提案するが、エリアスはこれには素早く拒否の意を示した。
「いえ! 結構です!」
恐ろしいほどの速さで後ろ向けに進んでいくエリアス。
……そんなに嫌なもの?
羽は私たち天使にとってはかなり大切なところ。無闇に曝したくないのは分かるが、何もそんなに嫌がらなくてもいいと思うのだが。
ちなみに羽マッサージ、私は大好きよ。
「分かった分かった、しないわよ。そんなに怯えた顔をしないでちょうだい」
今日の中で一番派手な表情がここで出るとは。分からないものね。
「つい……失礼しました」
「いいのよ。気にしないで」
そう言って二人で笑った。
これからはずっとこんな風に遊べるのね。なら少しは私の退屈もましになるかも。
◇終わり◇
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