上 下
2 / 3

2話

しおりを挟む
「来てくれたんだな、ロリア」
「はい。しかし何ですか、これは。女性が多過ぎです」

 集められている女性の見た目は幅広い。
 一般市民のように見える者もいれば、貴族のような身なりと者もいるし、劣化した布をまとっている貧民のような者もいる。上品そうな者もいれば逞しそうな者もいて、また、派手な人物も落ち着いた控えめな人物もいる。

 ただ、ほぼ全員に共通しているのは、胸もとが立派であること。

「彼女たちのことは気にしなくていい。遊び相手だ。ロリア、いずれ君は俺の妻となる。よろしく」
「はぁ……」
「王女であることを考慮して遊び相手ではなく婚約者とした。感謝してくれよ」

 とことん無礼な男だ。
 勇者だからってこんな喋り方をするのは、さすがに論外。

 その後、私は、カブスティンが可愛がっている女性たちにまたもや話しかけられる。

「あなた、王女様だからって勘違いしてるかもしれないけれど、その胸じゃ愛を得るのは無理よぅ? 分かってるんでしょうねぇ」
「お高くとまってんじゃないわよ。ここじゃ身分なんて関係ないの」
「だっさーい、ぱっとしなーい」

 私はそこで数日過ごした。が、女性たちに嫌みやら何やらを言われるばかり。良いことなんて一つもない。ただ唯一救いだったのは、カブスティンが私にはまだ手を出さなかったことだ。遠慮してか偶然かは知らないが、数日の間に、彼が私に直接触れることはなかった。

 それから数日が経った、ある日。
 私はこっそり抜け出した。
 男と女がぶつかり合うあんなところにはいられない。あんなところにいたらそのうち脳がどうにかなってしまう。男慣れすらしていない私には、あんな異世界のようなところにいるのは不可能だ。

 私は自力で城へ帰った。

「ロリア!? なぜここに!?」
「お父様、私、あそこにいるのは無理です」

 身一つで突然帰ってきた私を見て、父は愕然としていた。
しおりを挟む

処理中です...