婚約者がやたらと縛ってきて面倒臭いので、捨てられるよう反抗的に振る舞うことにしました。

２話

　もちろん浮気する気はない。
　倫理に反するようなことはしない。

　でもそれとこれとは話が別だ。

　前科があるならともかく、何もやらかしたことのない者に対して酷く疑いの目と圧をかけるというのはおかしなことだろう。

　そんなくだらない行為にはもう付き合わない。

「頼んでいませんが」
「はぁっ!?」

　他人に嫌われるのは勇気がいること。
　でも今は怖くない。
　だってアデリハートへの想いはとうに尽きているから。

「私は今まで浮気しましたか？」
「いや、まだだ」
「でしょう？　私はそういうことをする人間ではないのです。にもかかわらず貴方は疑ってばかり……さすがにもう耐えられませんよ、我慢の限界です」
「なっ……馬鹿なことを言うな！　確認してやっていたから浮気なくここまで来られたんだろうが！」

　アデリハートに好かれる方法や信じてもらえるようにする方法はこの世には存在しないだろう、が、嫌われる方法なら探せばあるはずだ。

「とにかく、もういい加減にしてください。付き合いきれません」
「お、お前！　なんという口ごたえを！」

　怒らせてみると――。

「もういい！　お前なんてどうでもいい！　精々男の群れに遊ばれろ！　……決めた、もう決めた、お前との婚約は破棄するッ!!」

　ついに良さげな展開が。

「婚約、破棄？」
「ああそうだ！　忠実でないお前に価値などない、それに、どうせ他の男と遊びまくりたいのだろうしな。お前みたいなそんな安い女は相手にしない」

　すべては理想的な方向へと進んでいる。
　これなら何とか上手くいきそうだ。