国は滅び婚約も何もかも失った私は魔族の王に差し出されることとなったのですが、意外な展開が待っていました。

四季

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2話「知ってしまいました」

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 幼い頃から見てきた景色とも、これでもうお別れ。

 思えば、この国での日々は良いものだった。

 当然、皆がそうであるように、私にだって嫌なことはあった。
 けれど、そんなものは気にならないくらい、良い思い出がたくさんある。

 たとえ国が滅んでも、その日々は決して消えたりしない。それは確かなことだ。すべてが焼け、すべてが壊れ、かつてそこにあったものが何一つなくなったとしても。それでも過ごした時間は消えない。誰か一人でもその日々を覚えていれば、過去は永遠になる。実際、この胸には確かに、思い出たちが刻まれている。

 なぜだか生き延びた。

 ならそれが定めなのだろう。

 私はこの国を忘れない。
 いつかここにあった物や人を忘れはしない。

 自由に怒ったり笑ったり泣いたり騒いだりできた時間を、なかったことにはさせない。

 そのために生きる……。

 だが。

 国があった地を発つその日、私は知ってしまった。

 なぜ精霊族軍がこの国を潰せたのか?

 私の婚約者だったあの王子が、精霊族軍と繋がっていたのだ。

「わりーですなぁ」
「いいんだ。あんな女どうでもいい。それより僕は精霊族の女性が欲しい、約束通り贈ってくれるんだよね?」
「もちろんでっさぁー。今、美女を選りすぐってるところですわ」
「はは、精霊族の女性の肉体を味わうのが楽しみだよ」
「待っててくだっせぇ」

 王子は精霊族軍の人物とそんな会話をしていた。

 間違いではない。
 よく知る王子を見間違うはずがない。

 彼は自分の欲望に忠実だった。

 そして、そのためだけに、我が国は滅んだ。
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