2 / 5
2話「知ってしまいました」
しおりを挟む
幼い頃から見てきた景色とも、これでもうお別れ。
思えば、この国での日々は良いものだった。
当然、皆がそうであるように、私にだって嫌なことはあった。
けれど、そんなものは気にならないくらい、良い思い出がたくさんある。
たとえ国が滅んでも、その日々は決して消えたりしない。それは確かなことだ。すべてが焼け、すべてが壊れ、かつてそこにあったものが何一つなくなったとしても。それでも過ごした時間は消えない。誰か一人でもその日々を覚えていれば、過去は永遠になる。実際、この胸には確かに、思い出たちが刻まれている。
なぜだか生き延びた。
ならそれが定めなのだろう。
私はこの国を忘れない。
いつかここにあった物や人を忘れはしない。
自由に怒ったり笑ったり泣いたり騒いだりできた時間を、なかったことにはさせない。
そのために生きる……。
だが。
国があった地を発つその日、私は知ってしまった。
なぜ精霊族軍がこの国を潰せたのか?
私の婚約者だったあの王子が、精霊族軍と繋がっていたのだ。
「わりーですなぁ」
「いいんだ。あんな女どうでもいい。それより僕は精霊族の女性が欲しい、約束通り贈ってくれるんだよね?」
「もちろんでっさぁー。今、美女を選りすぐってるところですわ」
「はは、精霊族の女性の肉体を味わうのが楽しみだよ」
「待っててくだっせぇ」
王子は精霊族軍の人物とそんな会話をしていた。
間違いではない。
よく知る王子を見間違うはずがない。
彼は自分の欲望に忠実だった。
そして、そのためだけに、我が国は滅んだ。
思えば、この国での日々は良いものだった。
当然、皆がそうであるように、私にだって嫌なことはあった。
けれど、そんなものは気にならないくらい、良い思い出がたくさんある。
たとえ国が滅んでも、その日々は決して消えたりしない。それは確かなことだ。すべてが焼け、すべてが壊れ、かつてそこにあったものが何一つなくなったとしても。それでも過ごした時間は消えない。誰か一人でもその日々を覚えていれば、過去は永遠になる。実際、この胸には確かに、思い出たちが刻まれている。
なぜだか生き延びた。
ならそれが定めなのだろう。
私はこの国を忘れない。
いつかここにあった物や人を忘れはしない。
自由に怒ったり笑ったり泣いたり騒いだりできた時間を、なかったことにはさせない。
そのために生きる……。
だが。
国があった地を発つその日、私は知ってしまった。
なぜ精霊族軍がこの国を潰せたのか?
私の婚約者だったあの王子が、精霊族軍と繋がっていたのだ。
「わりーですなぁ」
「いいんだ。あんな女どうでもいい。それより僕は精霊族の女性が欲しい、約束通り贈ってくれるんだよね?」
「もちろんでっさぁー。今、美女を選りすぐってるところですわ」
「はは、精霊族の女性の肉体を味わうのが楽しみだよ」
「待っててくだっせぇ」
王子は精霊族軍の人物とそんな会話をしていた。
間違いではない。
よく知る王子を見間違うはずがない。
彼は自分の欲望に忠実だった。
そして、そのためだけに、我が国は滅んだ。
1
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。
木山楽斗
恋愛
アルフェンド伯爵家の妾の子として生まれたエノフィアは、軟禁に近い状態で生活を送っていた。
伯爵家の人々は決して彼女を伯爵家の一員として認めず、彼女を閉じ込めていたのである。
そんな彼女は、ある日伯爵家から追放されることになった。アルフェンド伯爵家の財政は火の車であり、妾の子である彼女は切り捨てられることになったのだ。
しかし同時に、彼女を訪ねてくる人が人がいた。それは、王国の第三王子であるゼルーグである。
ゼルーグは、エノフィアを妻に迎えるつもりだった。
妾の子であり、伯爵家からも疎まれていた自分が何故、そんな疑問を覚えながらもエノフィアはゼルーグの話を聞くのだった。
氷のように冷たい王子が、私だけに溶けるとき
夜桜
恋愛
オルジア帝国の聖女ネリネは、ある日突然、婚約者であるベイスン宰相から婚約破棄を告げられる。無実の罪で両親を処刑され、彼女自身も国家反逆者として国外へ追放――すべてを奪われた少女は、絶望のまま荒れ果てた山道を彷徨っていた。
暴漢に命を狙われたその瞬間、黒馬に乗り、風のように現れたのは――アズール王国第三王子、ケラウノス。銀髪赤眼の冷ややかな美貌に、魔剣を携えた彼は、わずか数秒で暴漢を蹴散らす。そして、ネリネに手を差し伸べた。
「君を助けると、俺は決めていた」
ケラウノスはすべてを知っていた。帝国宰相と自国の王女との密通。ネリネ追放という謀略。
彼女を救うため、王子は国境を越えた。
少女は知らなかった――この出会いが、アズール王国をも巻き込む“愛と陰謀の渦”の幕開けになることを。
運命に翻弄され、誓いと陰謀が交差する中で、二人の心はやがて……。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
愛しているのは王女でなくて幼馴染
岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。
婚約者である王子の近くには何やら不自然なほどに親しい元侍女の女性がいるのですが……? ~幸せになれるなんて思わないことです~
四季
恋愛
婚約者である王子の近くには何やら不自然なほどに親しい元侍女の女性がいるのですが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる