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2話「取り敢えず親に」

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「ち、違う! 君は誤解しているよ! これは、その、ちょっとした戯れさ!」
「そうよ! あたしたち、そういう関係なんかじゃ……」

 ポーマーとリリネはそれぞれ慌てていた。

「あの、私、お二人の関係を邪魔しようとは思いません。なので……」

 ポーマーは一瞬安堵の色を浮かべたけれど。

「婚約は破棄します」

 そう告げると、後ろ向きに倒れて失神した。

 婚約破棄と言われたくらいで気を失うなんて、正直、驚きというか何というか。呆れてしまう。危険な橋を渡り損ねることでそれほどの衝撃を受けるのなら最初から余計なことなんてしなければ良いのに。そうすればこういうことに発展することだってないのに。

「リリネ、貴女が裏切っていたなんて驚いたわ」
「違う……違うんだよ、これは……」

 泣きそうなふりをしても無駄だ。

「何も違わないわ。夢みてるだけの地味女なんでしょ? 私。ちゃんと聞いていたわよ」
「え……どう、して……」
「私、耳はいいの。そんな人だとは思わなかった……じゃ、さようなら」

 すべて終わってしまった。
 この手で終わらせてしまった。

 でも、後悔はない。

 とはいえ、手続きはまだ完了していない。
 これから色々ややこしくなりそうだ。
 一人で動き過ぎると危ないので、取り敢えず親に相談してみよう。


 ◆


 その後、私は、今回の件について親に話した。
 婚約破棄を告げたことも。
 で、親は協力してくれることとなった。

 そこからは、話し合いやら何やらで忙しくなる。

 色々大変だったけれど、親が協力してくれたこともあって婚約破棄の話は順調に進み、一年もかからず無事ポーマーとの婚約を破棄することができた。

 ポーマーの親は「息子が失礼なことをしてすみません」と謝ってくれた。
 少し申し訳なく思ったけれど。
 でも、こちらを責めるようなことは言ってこなかったので、その点に関しては嬉しかった。

 婚約者と一番近い友人を同時に失った私だが、前を向くことはできる。

 これからまた未来について考えようと思う。
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