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前編

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 魔物を斬り続けて十年、私は、思わぬところで意外な展開に遭遇することとなる。

「ルーシェア! お前みたいな戦闘能力しか取り柄のない野蛮なだけの女はつまらん! よって、婚約は破棄とする!」

 婚約者であるルーカスから婚約の破棄を告げられたのだ。

 思えば直接的な出会いではなかった。

 彼との縁を繋いでくれたのは両親だ。

 戦いばかりに生きていた私の将来を心配した両親が彼を連れてきて紹介してくれて、それで、婚約するに至ったのである。

「野蛮、て。それはなかなか酷い言い方ですね」
「はぁ!?」
「だってそうでしょう。私は世の人々のためにも戦って魔物を減らしているのですよ? それを、野蛮、だけで片付けるなんて。正直、貴方がそんな人と知ってがっかりです」

 確かに、私は、お淑やかな女性ではない。そういう意味では彼の理想の人にはなれないかもしれない。が、野蛮な女などと言われる筋合いはないのだ。現に、魔物を倒した私に感謝してくれている人も世にはいるわけで。私だって悪いことばかりしているわけではないのだ。少しは世に貢献している。

「てめぇ! 偉そうなこと言いやがって!」
「なら貴方は世のために何をしているのですか?」
「ぐっ……」
「ですが、ま、いいでしょう。婚約破棄は受け入れます。では私はこれで……さようなら、ルーカス」
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