上 下
1 / 1

ボロクソに言われ婚約破棄された日からちょうど一年、一つの出会いから私の人生は大きく変化してゆくのです――!

しおりを挟む

 ボロクソに言われ婚約破棄された日からちょうど一年が経った日、花が咲いた。

 この花は、あの絶望の日に、婚約破棄された日に、家の前にぽつりと落ちていてそれを拾ったものだ。そしてそれを植木鉢に植えたのだ。そこから毎日のようにその植物を眺めていた。部屋の窓際に置いた植木鉢をそっと眺めるのが日々の唯一の癒しだったのである。

 そしてそれがついに花開いたのが、今日。

 朝、目を覚まして、ひっくり返りそうなくらい驚いた。

 ――開いたそれは虹色の花だったのだ。

「綺麗……」

 思わず呟いてしまったのはそれだった。

 絶望が去り、希望が降り注ぐ。
 そんな未来を垣間見たような気がして。

 嬉しくなっていたら。

「その花、とても綺麗ですね」

 少しだけ開けていた窓の向こう側から男性の声。

「すみません急に」
「あ……い、いえ。綺麗と言っていただけ嬉しいです」

 こうして訪れた細やかな出会いが私の人生を大きく変えてゆくのだということを、この時はまだ知らなかった――。

 あ、そうそう、ちなみに。

 かつて私のことを悪く言って捨てた彼だけれど、幸せは掴めなかったようだ。
 なんでもあの後ちょっとした出来心から街中で軽めながら痴漢行為をしてしまったそうで、それによって命以外のすべてを失うこととなったそうだ。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...