1 / 6
1話-1
しおりを挟む
桃色のジェシカと薄紫のノア。
天界の王国エンジェリカに暮らす貧しい天使二人組が、アンナ王女に出会うずっと前のお話。
◆
「ノア! 行くよっ!」
「待ってー。ジェシカ速いー」
「もう待てないっ! 食料持ったから飛ぶよっ!」
「あー。置いていかないでー」
あたしとノアは、幼い頃に出会ってからずっと一緒に暮らしてきた。朝昼の活動も盗みも、夜寝るのだって、全部二人で一緒にする。
あたしたちに男女の垣根なんてない。
食事はいつも店から盗んだパンや果物をちょっとだけ。手に入れた分を二人で半分ずつ食べる。成果によっては、丸一日まともな食事をしない日もあった。
お風呂屋へ行くお金はもちろんないので入浴は主に川で行った。入浴と言っても、軽く体を洗うくらいのものだが。
夜は毎日森で野宿する。冬場は、町のゴミ捨て場で拾ったボロボロの毛布に二人でくるまり、寒さを凌いだ。たまにマッチを盗み、火を起こして温もったりもした。
子ども二人でまともな生活ができるはずもなく——あたしとノアはもうずっと貧しい生活をしている。
「いやーっ、今日は食べ物いっぱい食べられるねっ! やったね、ノア」
今日はパンとリンゴを二つずつも手に入れられた。ここ数日あまり良い成果が上がっていなかったので、こんなご馳走は久々だ。
実はあたしが本当に好きな果物はモモなんだけど、エンジェリカではモモは高価なので滅多に食べられない。そもそも果物全般が高価だ。だからリンゴでも十分嬉しい。
「ジェシカが嬉しいと僕も嬉しいよー。リンゴはジェシカにあげるからねー」
「え、いいの?」
「うん。家族だからねー」
薄紫の髪と羽を持つノアは、まだ赤子のうちに親に売られ、「天使屋」という店で売り物にされていたらしい。
そんな不幸な身の上でありながら、ノアはとてもまったりした性格だ。いつも穏やかにニコニコしているし、口調も動きものんびりしている。
そんな彼は「家族」というものに憧れている。
あたしも小さな頃に母親に捨てられるという経験をし今に至っているわけなのだが、ノアの場合は親の顔を一度も見たことがない。そういう意味では、あたしよりノアの方がずっと不幸なのかもしれないと思う。
もっとも、彼の呑気な言動はそんなことを一切感じさせないが。
「そういえばさ、天使屋にいた頃のアンタはどんな生活をしてたの?」
皮つきのままのリンゴを直接かじりながらノアに尋ねる。
「うーん。普通の生活だよー」
「普通って言ってもよく分かんないじゃん。もっと具体的に説明してよ!」
「具体的ってー?」
「朝起きて何して何して……、夜は何して寝る、みたいな! つまり、もっと詳しい説明をしてってこと!」
天界の王国エンジェリカに暮らす貧しい天使二人組が、アンナ王女に出会うずっと前のお話。
◆
「ノア! 行くよっ!」
「待ってー。ジェシカ速いー」
「もう待てないっ! 食料持ったから飛ぶよっ!」
「あー。置いていかないでー」
あたしとノアは、幼い頃に出会ってからずっと一緒に暮らしてきた。朝昼の活動も盗みも、夜寝るのだって、全部二人で一緒にする。
あたしたちに男女の垣根なんてない。
食事はいつも店から盗んだパンや果物をちょっとだけ。手に入れた分を二人で半分ずつ食べる。成果によっては、丸一日まともな食事をしない日もあった。
お風呂屋へ行くお金はもちろんないので入浴は主に川で行った。入浴と言っても、軽く体を洗うくらいのものだが。
夜は毎日森で野宿する。冬場は、町のゴミ捨て場で拾ったボロボロの毛布に二人でくるまり、寒さを凌いだ。たまにマッチを盗み、火を起こして温もったりもした。
子ども二人でまともな生活ができるはずもなく——あたしとノアはもうずっと貧しい生活をしている。
「いやーっ、今日は食べ物いっぱい食べられるねっ! やったね、ノア」
今日はパンとリンゴを二つずつも手に入れられた。ここ数日あまり良い成果が上がっていなかったので、こんなご馳走は久々だ。
実はあたしが本当に好きな果物はモモなんだけど、エンジェリカではモモは高価なので滅多に食べられない。そもそも果物全般が高価だ。だからリンゴでも十分嬉しい。
「ジェシカが嬉しいと僕も嬉しいよー。リンゴはジェシカにあげるからねー」
「え、いいの?」
「うん。家族だからねー」
薄紫の髪と羽を持つノアは、まだ赤子のうちに親に売られ、「天使屋」という店で売り物にされていたらしい。
そんな不幸な身の上でありながら、ノアはとてもまったりした性格だ。いつも穏やかにニコニコしているし、口調も動きものんびりしている。
そんな彼は「家族」というものに憧れている。
あたしも小さな頃に母親に捨てられるという経験をし今に至っているわけなのだが、ノアの場合は親の顔を一度も見たことがない。そういう意味では、あたしよりノアの方がずっと不幸なのかもしれないと思う。
もっとも、彼の呑気な言動はそんなことを一切感じさせないが。
「そういえばさ、天使屋にいた頃のアンタはどんな生活をしてたの?」
皮つきのままのリンゴを直接かじりながらノアに尋ねる。
「うーん。普通の生活だよー」
「普通って言ってもよく分かんないじゃん。もっと具体的に説明してよ!」
「具体的ってー?」
「朝起きて何して何して……、夜は何して寝る、みたいな! つまり、もっと詳しい説明をしてってこと!」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる