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あたしは戦いが好き。
それが原因であたしは親に捨てられた。天使なのに戦いが好きなのはおかしいらしい。自分の子どもに「不気味」と言うなんて、酷い大人もいるものだ。
一番最初に襲いかかってきたのは、ノアを「紫」と呼ぶ男性天使。手首から肘までくらいの刃渡りのナイフを振り回しながら接近してきた。素早く懐に潜り込み、男性天使の胸部を肘で殴る。その威力で一瞬怯んだ男性天使の胸元を、剣で下から斬り上げる。う゛っ、と詰まるような声を出して倒れた。
「なかなかやりますね……ですが!」
「ふっ、手加減しねぇぜ」
女性天使と「ふっ、手加減しねぇぜ」しか言わないおじさん天使が同時に攻撃を仕掛けてくる。あたしは剣を持ったままその場で回転し、二人同時に斬った。
「よし! 片付け完了っ」
あたしは三人を仕留めたことを確認すると、ノアのところへ戻る。
ノアは地面に座り込み小刻みに震えていた。顔は真っ青になり、羽は縮み、暗い紫の瞳には泣き出しそうなくらい涙が溜まっている。随分怖かったようだ。
「ノア、大丈夫?」
「う、う、うー……っ、うわああぁぁぁぁぁぁん!」
声をかけると、ノアは突然泣き出した。こんなに号泣するところを見るのは初めてかもしれない。ノアはいつも呑気にニコニコ笑っているから。
強く抱きつかれ、さすがに動揺する。案外力が強いし。こんなに全力で抱きつかれると少し痛い。
「そんなに泣かないでよ。心配しなくてもあたしがいるじゃん!」
「でも、でもー……でもだよー……。でもジェシカは、でもでもー……」
「ちょ、ほとんどでもしか言ってないじゃん!」
ノアは相変わらず意味が分からないことばかり言う。
だが、余程怖かったのだろうということは理解できるので、あたしはこれ以上何も言わないことにした。過去に自分に怖い思いをさせた相手が現れたのだ。恐れて震えるのは当然かもしれない。
あたしはノアをギュッと抱き締め返し、彼の頭をゆっくりと撫でる。手に触れる薄紫の髪は柔らかくて心地よい。
「怖かったね、大丈夫だよ。よしよし」
頭を撫でてあげていると、ノアはいつの間にか眠ってしまっていた。あたしの腕の中で。気持ちよさそうな顔で、スヤスヤと穏やかに寝ている。
いつもならノアが寝たら叩き起こすのだが、こんなことがあった後だ。今日くらいはゆっくり寝させてあげよう。
あたしはノアを木の根元まで運び、その体にふるぼけた毛布をかける。結構雑に動かしたが起きない。丁寧に動かすのが苦手なあたしにとって、そこはノアの良いところだ。
それが原因であたしは親に捨てられた。天使なのに戦いが好きなのはおかしいらしい。自分の子どもに「不気味」と言うなんて、酷い大人もいるものだ。
一番最初に襲いかかってきたのは、ノアを「紫」と呼ぶ男性天使。手首から肘までくらいの刃渡りのナイフを振り回しながら接近してきた。素早く懐に潜り込み、男性天使の胸部を肘で殴る。その威力で一瞬怯んだ男性天使の胸元を、剣で下から斬り上げる。う゛っ、と詰まるような声を出して倒れた。
「なかなかやりますね……ですが!」
「ふっ、手加減しねぇぜ」
女性天使と「ふっ、手加減しねぇぜ」しか言わないおじさん天使が同時に攻撃を仕掛けてくる。あたしは剣を持ったままその場で回転し、二人同時に斬った。
「よし! 片付け完了っ」
あたしは三人を仕留めたことを確認すると、ノアのところへ戻る。
ノアは地面に座り込み小刻みに震えていた。顔は真っ青になり、羽は縮み、暗い紫の瞳には泣き出しそうなくらい涙が溜まっている。随分怖かったようだ。
「ノア、大丈夫?」
「う、う、うー……っ、うわああぁぁぁぁぁぁん!」
声をかけると、ノアは突然泣き出した。こんなに号泣するところを見るのは初めてかもしれない。ノアはいつも呑気にニコニコ笑っているから。
強く抱きつかれ、さすがに動揺する。案外力が強いし。こんなに全力で抱きつかれると少し痛い。
「そんなに泣かないでよ。心配しなくてもあたしがいるじゃん!」
「でも、でもー……でもだよー……。でもジェシカは、でもでもー……」
「ちょ、ほとんどでもしか言ってないじゃん!」
ノアは相変わらず意味が分からないことばかり言う。
だが、余程怖かったのだろうということは理解できるので、あたしはこれ以上何も言わないことにした。過去に自分に怖い思いをさせた相手が現れたのだ。恐れて震えるのは当然かもしれない。
あたしはノアをギュッと抱き締め返し、彼の頭をゆっくりと撫でる。手に触れる薄紫の髪は柔らかくて心地よい。
「怖かったね、大丈夫だよ。よしよし」
頭を撫でてあげていると、ノアはいつの間にか眠ってしまっていた。あたしの腕の中で。気持ちよさそうな顔で、スヤスヤと穏やかに寝ている。
いつもならノアが寝たら叩き起こすのだが、こんなことがあった後だ。今日くらいはゆっくり寝させてあげよう。
あたしはノアを木の根元まで運び、その体にふるぼけた毛布をかける。結構雑に動かしたが起きない。丁寧に動かすのが苦手なあたしにとって、そこはノアの良いところだ。
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