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川へはすぐに到着した。
日差しが強いからだろうか、流れる水がキラキラ輝いていて、いつもより澄んでいるように見える。とても綺麗な光景に、あたしは暫し釘付けになった。
隣にいたノアは川の方へと駆け出す。しかし、川の手前で砂利につまずき顔面から転けた。しばらく起き上がってこないので、呆れながらもすぐに駆け寄る。
「ちょ、大丈夫?」
声に反応してゆっくり顔を上げるノア。彼は予想外にも笑っていた。
「うん、平気平気だよー」
目を凝らしてノアの顔を見ると、うっすらと膜のようなものがあることに気づく。髪と同じ薄紫の膜だ。
「その膜みたいなの何?」
「あー。転けちゃったねー」
「いや、話聞いてよ!」
するとノアはキョトンとした顔になり首を傾げる。あたしが聞いていることの意味が理解できないようだ。
聞くより試した方が早そうなので、ノアの顔に触れてみることにした。しかし、伸ばした手は薄紫の膜に遮られノアの肌に触れられない。
試してみた後、あたしは即座に気がついた。
「これ、もしかしてアンタの聖気なんじゃない!?」
天使が生まれつきまとう聖気には様々な色や種類がある。そして、聖気でどういうことができるかはそれぞれ違う。
あたしの場合は剣を作り出すことができる。しかしノアは、聖気が持つ力が何なのか知らないと言っていた。だから「防御膜を作るのがノアの力だったのでは?」と思ったわけだ。
しかし本人はというと相変わらずで、「そうなのかなー?」と言いながら笑顔で首を傾げている。話が飲み込めていないらしい。呑気というか何というか……言葉では言い表しようのないのがノアという天使だ。彼がいつもこんな調子だから、あたしは溜め息が尽きない。
溜め息をつくと幸せが逃げていくと言う。なるべく溜め息なしで済めば良いのだが、ノアと暮らしているとそれは難しい。
「とにかく魚を捕まえてー、ジェシカをお腹いっぱいにしてあげるよー」
ノアはゆっくり立ち上がると、川に向かって走り出す。走らず歩けばいいのに。安定感のない場所で走るから転倒するんじゃ——と思った瞬間また転けた。予想通りすぎる展開に呆れずにはいられない。なぜこうも不器用なのか。
「ノアはもういいよ! 魚はあたしが捕るから!」
「えー。どうしてー?」
「頼りないアンタなんかには任せられない!」
少し苛立ち、勢いよく川へ入っていく。そんなあたしの後ろから追いかけてくるノア。
「待ってよー。たまには僕がー頑張るからー」
「いいって! もう、邪魔っ!」
ついカッとなったあたしは、ノアを突き飛ばしてしまった。
彼の細く軽い体は吹き飛び、勢いよく後ろへ倒れ込む。バシャンと大きな飛沫がかかり、それで正気を取り戻したあたしは、慌ててノアに寄る。
転倒した拍子に頭付近を軽く打ったからだろうか、彼は気を失ってしまっていた。傷は見当たらないし出血もないため重傷ではないと思うが、少し心配だ。あたしが突き飛ばしたせいでこうなったというのもあるし。
あたしは取り敢えず川の外へ運ぶことに決めた。長時間水に濡れていては体が冷えてしまう。
日差しが強いからだろうか、流れる水がキラキラ輝いていて、いつもより澄んでいるように見える。とても綺麗な光景に、あたしは暫し釘付けになった。
隣にいたノアは川の方へと駆け出す。しかし、川の手前で砂利につまずき顔面から転けた。しばらく起き上がってこないので、呆れながらもすぐに駆け寄る。
「ちょ、大丈夫?」
声に反応してゆっくり顔を上げるノア。彼は予想外にも笑っていた。
「うん、平気平気だよー」
目を凝らしてノアの顔を見ると、うっすらと膜のようなものがあることに気づく。髪と同じ薄紫の膜だ。
「その膜みたいなの何?」
「あー。転けちゃったねー」
「いや、話聞いてよ!」
するとノアはキョトンとした顔になり首を傾げる。あたしが聞いていることの意味が理解できないようだ。
聞くより試した方が早そうなので、ノアの顔に触れてみることにした。しかし、伸ばした手は薄紫の膜に遮られノアの肌に触れられない。
試してみた後、あたしは即座に気がついた。
「これ、もしかしてアンタの聖気なんじゃない!?」
天使が生まれつきまとう聖気には様々な色や種類がある。そして、聖気でどういうことができるかはそれぞれ違う。
あたしの場合は剣を作り出すことができる。しかしノアは、聖気が持つ力が何なのか知らないと言っていた。だから「防御膜を作るのがノアの力だったのでは?」と思ったわけだ。
しかし本人はというと相変わらずで、「そうなのかなー?」と言いながら笑顔で首を傾げている。話が飲み込めていないらしい。呑気というか何というか……言葉では言い表しようのないのがノアという天使だ。彼がいつもこんな調子だから、あたしは溜め息が尽きない。
溜め息をつくと幸せが逃げていくと言う。なるべく溜め息なしで済めば良いのだが、ノアと暮らしているとそれは難しい。
「とにかく魚を捕まえてー、ジェシカをお腹いっぱいにしてあげるよー」
ノアはゆっくり立ち上がると、川に向かって走り出す。走らず歩けばいいのに。安定感のない場所で走るから転倒するんじゃ——と思った瞬間また転けた。予想通りすぎる展開に呆れずにはいられない。なぜこうも不器用なのか。
「ノアはもういいよ! 魚はあたしが捕るから!」
「えー。どうしてー?」
「頼りないアンタなんかには任せられない!」
少し苛立ち、勢いよく川へ入っていく。そんなあたしの後ろから追いかけてくるノア。
「待ってよー。たまには僕がー頑張るからー」
「いいって! もう、邪魔っ!」
ついカッとなったあたしは、ノアを突き飛ばしてしまった。
彼の細く軽い体は吹き飛び、勢いよく後ろへ倒れ込む。バシャンと大きな飛沫がかかり、それで正気を取り戻したあたしは、慌ててノアに寄る。
転倒した拍子に頭付近を軽く打ったからだろうか、彼は気を失ってしまっていた。傷は見当たらないし出血もないため重傷ではないと思うが、少し心配だ。あたしが突き飛ばしたせいでこうなったというのもあるし。
あたしは取り敢えず川の外へ運ぶことに決めた。長時間水に濡れていては体が冷えてしまう。
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