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後編

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 ◆


「こちらの書類なのですが」
「あ、はい! ありがとうございます!」

 あれから数年、私は今、第二王子の妻として日々仕事に打ち込んでいる。

 この身分は思ったよりやらなくてはならないことが多かった。
 とにかく忙しい。
 生活の保証はあるけれど、平民の十倍は仕事がある。

「ここへ置かせていただきます」
「すみません! 助かります!」

 朝から晩までしなくてはならないことがびっしり。

「あのー、先日言っていた紙ですけどー、できてますー?」
「はい! あ、すぐに渡しますね!」

 正直ここまで忙しいとは思わなかった。
 もっとゆったり暮らせるものと思っていたのだが。

 でも、愚痴を言っていても始まらない。

「取りに参りますー」
「すみません、はい、こちらになります」
「はいー。ありがとうございますー」
「お手間おかけして失礼しました」
「いえいえー」

 どんなに忙しくても、これは私が選んだ道だ。

 虐めてくる人がいないだけ良いと思わなくては。

「お疲れでしょう、こちらにハーブティーを置いておきますね」
「すみません! ありがとうございます!」
「先日気に入られていた種類のハーブティーをご用意しました」
「あれですか。あれ、とっても美味しかったんです。またいただけて嬉しいです」

 ちなみにブルルはというと、あの後窃盗を繰り返したことで罪人となってしまったそうだ。

 もっと良い人と巡り会ったと言っていたが……きっとその人との関係もとうに終わっているのだろうな。


◆終わり◆
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