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episode.196 援護と薬と
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グラネイトとウェスタが、エアリから貰った薬について話していた、そんな時だ。
「お邪魔するべ」
人影が部屋に入ってくる。
その独特な口調で、グラネイトとウェスタはすぐに気づいた。入ってきたのか誰なのか、を。
「良い空気のところ、いきなりごめんべ」
布巾を頭に巻き付けた青年、ダベベだ。
彼を即座に敵と判断したグラネイトは、ウェスタを庇うように位置取りながら睨みつける。
「すぐに二人揃ってあの世へ送るから、許してほしいべ」
「……ふざけたことを」
日頃はふざけているような振る舞いばかりのグラネイトだが、今だけは真剣な険しい表情だ。
「ふざけてないべ。ささっと片付けるよう言われて来たべ」
「そのようなこと、させるわけがないだろう!」
グラネイトはその場で立ち上がる。
もちろん、ダベベへの鋭い視線はそのままで。
「……グラネイト、戦うのなら援護する」
「ウェスタはそこにいていいぞ!」
「一対一は厳しいと思うが……」
「無理をするな! 最強のグラネイト様を信じろ!」
グラネイトは背後のウェスタにだけは笑顔を見せる。けれど、そんな彼へ視線を向けるウェスタの表情は暗かった。彼女の紅の瞳は、何か言いたげに、グラネイトの背を凝視している。が、グラネイトはそれには気づかない。
「別れの準備はできたようだべな」
「ふはは! お前との別れの準備、だがな!」
「どうなるかは、終わってからのお楽しみだべ」
ダベベは右手に短剣を握る。
そして、左手の指をパチンと鳴らした。
瞬間、犬のような生物が五頭ほど現れる。口からは涎を垂らし、獰猛そうな表情だ。
「……やれやれ、厄介だな」
グラネイトは溜め息混じりに呟く。
「行くべ!」
ダベベの号令で、犬のような生物たちが一斉に駆け出す。五頭の十個の眼が、グラネイトを睨んでいた。
グラネイトは爆発能力を帯びた球体を作り出し、五頭それぞれに向けて放つ。
生物に命中し、球体は爆発。
煙が立ち込める。
「ふはは! 見たか! ……ん?」
グラネイト付近の煙が微かに揺れる。
次の瞬間、灰色の煙に身を隠し接近してきていたダベベが、グラネイトの間近に出現した。
「なにっ……!」
「こんなことして、ごめんだべ」
そう静かに述べるダベベの顔面からは、色が完全に消えていた。感情の「か」の字もない、そんな顔。
体を低くしてグラネイトの懐に潜り込んだダベベは、右手で握った短剣を振る。
そして、ぴしゃりと赤いものが散った。
短剣の刃が赤く曇る。
刃は、グラネイトの腹部を切っていたのだ。
幸い深手ではない。グラネイトは攻撃を受ける直前、咄嗟に体を後ろへ引いていた。そのため、浅い傷で済んでいる。
「動かないでほしいべ。上手く殺れないべ」
「上手下手関係なく殺られる気はない!」
グラネイトの後ろにはウェスタがいる。それゆえ彼は今以上下がれない。そんなことをしたら、ウェスタにぶつかるか彼女を危険に晒すことになるからだ。
限られた選択肢しかないが、反撃せねばならない。
「邪魔だ!」
グラネイトはダベベに回し蹴りを叩き込む。ダベベは足が迫る方の腕で防ごうとしたが、グラネイトの足の方が速かった。回し蹴りは見事に決まる。
「ふぎゃ!」
蹴り飛ばされ、床に倒れ込むダベベ。
しかし、そこへ、爆発に耐えて生き延びていた三頭が突っ込んでくる。
グラネイトはダベベに意識を割かれており、犬のような生物たちの突進に反応が間に合わない。
——が、突如放出された炎が犬のような生物たちを一掃した。
「ウェスタか!」
「……しっかりしろ」
「さすが! ナイス過ぎる!」
「……それとこれ」
犬のような生物たちを火炎の術にて撃破したウェスタは、グラネイトに瓶を差し出す。三種類のうち、止血効果があると言われているものだ。
「そうか! 止血だな!」
ピンときたらしく、グラネイトは納得した顔をする。
「助かったぞ!」
ウェスタの手から瓶を受け取ると、栓を抜き、赤く滲んでいる腹部に軽くかけた。すると、傷口から漏れ出てきていた血液の量が、みるみるうちに減っていく。そして、一分もかからぬうちに出血は止まった。
「連携に薬……なかなかやるべな……」
グラネイトの回し蹴りを食らったダベベは、そんなことを呟きながら、赤黒い液体がなみなみと入った小さな蓋付き瓶を取り出す。そして素早く蓋を開けると、中身を一気に飲み干した。
「ふぅ、飲めたべ……」
呑気に独り言を発しているダベベに、グラネイトとウェスタは警戒の眼差しを向けている。
「よし……もうひと頑張りだべ……」
ダベベは短剣を持っていない方の手のひらで、自分の頬を強く叩く。原始的な方法で気合いを入れて、一気に立ち上がる。
そして、駆け出した。
グラネイトとウェスタの方へ。
「ふはは! グラネイト様に勝てると思うなよ!」
戦闘体勢で迎え撃つグラネイト。
ダベベはそこに迷わず突っ込んでいく。
「ここからは本気だべ!」
今度こそ、本格的な接近戦の幕開けだ。
ダベベは体を小さくし、グラネイトの懐に潜り込む隙を探しながら、短剣を素早く振る。
グラネイトが豪快な一撃を放てなくするため、空白を作らないように努めているような動きをしていた。即座に懐へ潜り込むことはできずとも、反撃の隙を作らない。そんな手堅い戦い方を、ダベベは選んでいた。
一方のグラネイトは、ダベベが振り回す短剣の刃を受けないよう、腕を上手く使って受け流している。
ウェスタは今もまだその後ろに座っている状態だ。
彼女は、医者に動くなと言われているし、以前貫かれた痛みが残っているから、動きたくとも動く選択をしづらいという状況に陥っていた。
下手に動いてグラネイトの足を引っ張るくらいなら、少し離れている方がまし——そう思うところも大きくて。
そんな時。
突然、ダベベが低い声を発した。
「効いてきたべ」
静かな言い方だが、それはとても不気味さを漂わせている発言で。グラネイトも警戒する。
「いくべ!」
グラネイトの意識は警戒する方向に動き、それによって僅かな隙が生まれた。ダベベはそれを見逃さず、大きく一歩踏み込む。
短剣による攻撃を受け流すべく、グラネイトは動く。
——が、刃がグラネイトに命中する二秒ほど前、ダベベは急に短剣を捨てた。
「なに!?」
武器を捨て、全身の位置を下げる。
彼は完全にグラネイトの懐へ潜り込んだ。
大きく振りかぶった拳で鳩尾を一突き。そして、体勢を立て直す隙など与えず、もう一方の拳で全力の打撃を繰り出す。
その二連続打撃で、グラネイトの体は一瞬にして吹き飛んだ。
凄まじい勢いで飛んでいったグラネイトを目にして、ウェスタは愕然とする。だが、ものの数秒で冷静さを取り戻した彼女は、一瞬にして床に落ちた短剣を拾い上げる。
そして、グラネイトに打撃を当てて気が緩んでいたダベベに、強烈な一撃を食らわせた。
「え……」
「あれをやられて黙ってはいられない」
拾った短剣によるウェスタの一撃。
急所を確実に狙ったそれは、致命傷となった。
ダベベは短剣を捨てることでグラネイトに攻撃を当てることができた。だが、結局、その捨てた短剣が己の命を奪い去ることとなったのだ。
「グラネイト、無事か」
ウェスタはすぐにグラネイトに駆け寄る。
「……敵は倒した。もう大丈夫」
グラネイトは仰向けに寝たまま動けない。辛うじて意識は保っているものの、息は荒れ、目つきも少しおかしい。
そんな彼の片手を、ウェスタは強く掴む。
途中腹の傷が痛む場面もあったが、今の彼女は、自身のことはあまり気にかけていなかった。
「お邪魔するべ」
人影が部屋に入ってくる。
その独特な口調で、グラネイトとウェスタはすぐに気づいた。入ってきたのか誰なのか、を。
「良い空気のところ、いきなりごめんべ」
布巾を頭に巻き付けた青年、ダベベだ。
彼を即座に敵と判断したグラネイトは、ウェスタを庇うように位置取りながら睨みつける。
「すぐに二人揃ってあの世へ送るから、許してほしいべ」
「……ふざけたことを」
日頃はふざけているような振る舞いばかりのグラネイトだが、今だけは真剣な険しい表情だ。
「ふざけてないべ。ささっと片付けるよう言われて来たべ」
「そのようなこと、させるわけがないだろう!」
グラネイトはその場で立ち上がる。
もちろん、ダベベへの鋭い視線はそのままで。
「……グラネイト、戦うのなら援護する」
「ウェスタはそこにいていいぞ!」
「一対一は厳しいと思うが……」
「無理をするな! 最強のグラネイト様を信じろ!」
グラネイトは背後のウェスタにだけは笑顔を見せる。けれど、そんな彼へ視線を向けるウェスタの表情は暗かった。彼女の紅の瞳は、何か言いたげに、グラネイトの背を凝視している。が、グラネイトはそれには気づかない。
「別れの準備はできたようだべな」
「ふはは! お前との別れの準備、だがな!」
「どうなるかは、終わってからのお楽しみだべ」
ダベベは右手に短剣を握る。
そして、左手の指をパチンと鳴らした。
瞬間、犬のような生物が五頭ほど現れる。口からは涎を垂らし、獰猛そうな表情だ。
「……やれやれ、厄介だな」
グラネイトは溜め息混じりに呟く。
「行くべ!」
ダベベの号令で、犬のような生物たちが一斉に駆け出す。五頭の十個の眼が、グラネイトを睨んでいた。
グラネイトは爆発能力を帯びた球体を作り出し、五頭それぞれに向けて放つ。
生物に命中し、球体は爆発。
煙が立ち込める。
「ふはは! 見たか! ……ん?」
グラネイト付近の煙が微かに揺れる。
次の瞬間、灰色の煙に身を隠し接近してきていたダベベが、グラネイトの間近に出現した。
「なにっ……!」
「こんなことして、ごめんだべ」
そう静かに述べるダベベの顔面からは、色が完全に消えていた。感情の「か」の字もない、そんな顔。
体を低くしてグラネイトの懐に潜り込んだダベベは、右手で握った短剣を振る。
そして、ぴしゃりと赤いものが散った。
短剣の刃が赤く曇る。
刃は、グラネイトの腹部を切っていたのだ。
幸い深手ではない。グラネイトは攻撃を受ける直前、咄嗟に体を後ろへ引いていた。そのため、浅い傷で済んでいる。
「動かないでほしいべ。上手く殺れないべ」
「上手下手関係なく殺られる気はない!」
グラネイトの後ろにはウェスタがいる。それゆえ彼は今以上下がれない。そんなことをしたら、ウェスタにぶつかるか彼女を危険に晒すことになるからだ。
限られた選択肢しかないが、反撃せねばならない。
「邪魔だ!」
グラネイトはダベベに回し蹴りを叩き込む。ダベベは足が迫る方の腕で防ごうとしたが、グラネイトの足の方が速かった。回し蹴りは見事に決まる。
「ふぎゃ!」
蹴り飛ばされ、床に倒れ込むダベベ。
しかし、そこへ、爆発に耐えて生き延びていた三頭が突っ込んでくる。
グラネイトはダベベに意識を割かれており、犬のような生物たちの突進に反応が間に合わない。
——が、突如放出された炎が犬のような生物たちを一掃した。
「ウェスタか!」
「……しっかりしろ」
「さすが! ナイス過ぎる!」
「……それとこれ」
犬のような生物たちを火炎の術にて撃破したウェスタは、グラネイトに瓶を差し出す。三種類のうち、止血効果があると言われているものだ。
「そうか! 止血だな!」
ピンときたらしく、グラネイトは納得した顔をする。
「助かったぞ!」
ウェスタの手から瓶を受け取ると、栓を抜き、赤く滲んでいる腹部に軽くかけた。すると、傷口から漏れ出てきていた血液の量が、みるみるうちに減っていく。そして、一分もかからぬうちに出血は止まった。
「連携に薬……なかなかやるべな……」
グラネイトの回し蹴りを食らったダベベは、そんなことを呟きながら、赤黒い液体がなみなみと入った小さな蓋付き瓶を取り出す。そして素早く蓋を開けると、中身を一気に飲み干した。
「ふぅ、飲めたべ……」
呑気に独り言を発しているダベベに、グラネイトとウェスタは警戒の眼差しを向けている。
「よし……もうひと頑張りだべ……」
ダベベは短剣を持っていない方の手のひらで、自分の頬を強く叩く。原始的な方法で気合いを入れて、一気に立ち上がる。
そして、駆け出した。
グラネイトとウェスタの方へ。
「ふはは! グラネイト様に勝てると思うなよ!」
戦闘体勢で迎え撃つグラネイト。
ダベベはそこに迷わず突っ込んでいく。
「ここからは本気だべ!」
今度こそ、本格的な接近戦の幕開けだ。
ダベベは体を小さくし、グラネイトの懐に潜り込む隙を探しながら、短剣を素早く振る。
グラネイトが豪快な一撃を放てなくするため、空白を作らないように努めているような動きをしていた。即座に懐へ潜り込むことはできずとも、反撃の隙を作らない。そんな手堅い戦い方を、ダベベは選んでいた。
一方のグラネイトは、ダベベが振り回す短剣の刃を受けないよう、腕を上手く使って受け流している。
ウェスタは今もまだその後ろに座っている状態だ。
彼女は、医者に動くなと言われているし、以前貫かれた痛みが残っているから、動きたくとも動く選択をしづらいという状況に陥っていた。
下手に動いてグラネイトの足を引っ張るくらいなら、少し離れている方がまし——そう思うところも大きくて。
そんな時。
突然、ダベベが低い声を発した。
「効いてきたべ」
静かな言い方だが、それはとても不気味さを漂わせている発言で。グラネイトも警戒する。
「いくべ!」
グラネイトの意識は警戒する方向に動き、それによって僅かな隙が生まれた。ダベベはそれを見逃さず、大きく一歩踏み込む。
短剣による攻撃を受け流すべく、グラネイトは動く。
——が、刃がグラネイトに命中する二秒ほど前、ダベベは急に短剣を捨てた。
「なに!?」
武器を捨て、全身の位置を下げる。
彼は完全にグラネイトの懐へ潜り込んだ。
大きく振りかぶった拳で鳩尾を一突き。そして、体勢を立て直す隙など与えず、もう一方の拳で全力の打撃を繰り出す。
その二連続打撃で、グラネイトの体は一瞬にして吹き飛んだ。
凄まじい勢いで飛んでいったグラネイトを目にして、ウェスタは愕然とする。だが、ものの数秒で冷静さを取り戻した彼女は、一瞬にして床に落ちた短剣を拾い上げる。
そして、グラネイトに打撃を当てて気が緩んでいたダベベに、強烈な一撃を食らわせた。
「え……」
「あれをやられて黙ってはいられない」
拾った短剣によるウェスタの一撃。
急所を確実に狙ったそれは、致命傷となった。
ダベベは短剣を捨てることでグラネイトに攻撃を当てることができた。だが、結局、その捨てた短剣が己の命を奪い去ることとなったのだ。
「グラネイト、無事か」
ウェスタはすぐにグラネイトに駆け寄る。
「……敵は倒した。もう大丈夫」
グラネイトは仰向けに寝たまま動けない。辛うじて意識は保っているものの、息は荒れ、目つきも少しおかしい。
そんな彼の片手を、ウェスタは強く掴む。
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