いちねんのうた

四季

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10〜12

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【十月】

夏過ぎて
もうじき来るは
儚き季節
風寒くなる
切なき季節

帰り道の別れしな
それすらも物悲しくなるような
さよならの一言
それさえも泣きそうになるような

夏過ぎて
もうじき来るは
儚い季節
肌寒くなる
切なすぎる季節


【十一月】

夕焼けがいつになく
美しく見える
夕焼けをいつになく
美しく思う

あの朱を滲ませた空は
何を言おうとしているのだろう
あの朱が滲むそらは
何を言いたいと願うだろう

夕焼けがいつになく
寂しげに見える
夕焼けをいつになく
寂しげに感じる

世の終わり
人の終わり
すべてを見てきた

あの空は
何を思うのか……


【十二月】

街行く人の足取りは軽く
踊っているみたい
誰もが皆特別な何かを抱えて
周囲には目もくれず歩いてゆく

急がないで

周りを見て

そんな声なんて聞こえないかのように
歩き続けていく

立ち止まって

こっちを見て

そんな声を発しても誰一人聞かず
ただ歩くだけ

お願い
こっちを見て

そう言おうとした時

空から一つ
白いものが舞い降りてきた
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