異世界恋愛短編集 ~婚約破棄されても幸せになることはできます~

四季

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いつも「つまらない、お前は、本当につまらない」とばかり言っていた私の婚約者が……。

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 いつも「つまらない、お前は、本当につまらない」とばかり言っていた私の婚約者ディフォス・ミッシェロ・アダルケンがこの世を去った。

 数日前突然連絡があって。
 それによって私も両親も彼が亡くなったことを初めて知った。

 で、彼との婚約は自動的に破棄に。

 かなり驚きはした。動揺もあった。私も、親も、どちらも。あまりにも突然の出来事に暫し声が出なくなるほどで。その日は家の空気が何とも言えないようなものとなっていた。

 けれども彼の死を悲しむ者はいなかった。

 なんせ彼はいつも私に心ない言葉をかけてきていたのだ。

 どんな時も彼は優しくなかった。思いやりを持って接してくれたことなんて一度もない。珍しく機嫌が良いなぁ、と思って見ていた時ですら、私の顔を見るや否やそれはもう大きな大きな溜め息をついて。まるで私の心に刃を向けるかのように意地悪な言葉をなげつけてきたほどであった。

 そんなディフォスが馬車数台が絡んだ事故によって亡くなったとしても、可哀想だなんて思うはずもない。

 いつも心なかった人。
 いつも傷つけてきていた人。

 そんな人、どうなろうがどうでもいい。

 人間関係とはお互い様。支え合い、思いやりを持ち合って、それで初めて上手く成り立つもの。そこを少しも考慮せず関わっていては良い関係を築けるはずもないのだ。雑な接し方をしていて良い関係を築くことなど不可能である。

 私たちの関係は冷めきったものだった。

 それは片方の死を経ても変わらない。


◆終わり◆
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