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前編
しおりを挟む私はついていない人だった。
婚約者オルトレンには会うたびに「可愛くない」とか「ぱっとしない」とか言われ、オルトレンの母親にはことあるごとに嫌みを言われて定期的に睨まれた。
彼の家にいる時、私に居場所はなかった。
オルトレンも、オルトレンの母親も、私を受け入れてくれてはいなかった――そういうところを含めての、ついていない人、という表現である。
だがある日のこと。
「おい。ちょっといいか?」
「……はい」
オルトレンからいきなり声をかけられて。
「お前との婚約だがな、破棄とすることにした」
――そんなことを告げられた。
それは本来とても悲しいことだろう、傷つくことだろう。けれども私にとっては一種の解放の言葉で。そういう意味で、私にとっては辛い言葉ではなかった。
関係を解消できるなら、もう関わらなくて良くなるのなら、そんなにありがたいことはない。
「いいか?」
「はい」
「受け入れるのだな?」
「はい、貴方がそれをお望みなら」
「ではそういうことで! さらばだ、女」
こうして私とオルトレンの関係は終わった。
けれどもそれは嬉しいことだった。
だってもうこれであれこれ言われなくて済む、そう思うと自然と顔がにやけた。
実家へ帰った私は、ゆったりと過ごすことにした。
「いいのよ、貴女はここでのんびりしていなさい」
「ああそうだぞ! 可愛い娘だ、ずっとここにいて構わない」
両親は温かく受け入れてくれて。
「ありがとう、母さん、父さん」
おかげで何も辛くはなかった。
それからは色々なことに挑戦した。
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