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後編

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 ◆


 あれから十年、私は二児の母となり、家庭で穏やかに暮らしている。

 夫は国境警備隊所属の男性。
 そのため彼は家にいないことも少なくはない。
 けれども時折再会できれば抱き締めあえる。
 常に一緒でないからこそ、愛は確かだと思えるし、会うたびに互いを大事に抱き締めることができるのだ。

「ただいまー!」
「うわっ」

 離れている夫婦と言うと良く思われないかもしれないけれど、案外良いものだ。

 常に一緒にあることだけがすべてではない。
 夫婦にも色々な形がある。
 十組の夫婦があれば十通りの関係性や関わり方がある。

 想い合えているならそれだけでいい。
 私はそう考えている。

 だから、私は、彼と夫婦になれて嬉しい。

「え、何それ?」
「ごめんなさい……急だったからびっくりしたの……」
「声大きすぎたかな」
「そうね。連絡なく帰ってきたうえいきなり大声を出されると、ちょっとびっくりしてしまうわ」
「ごめん……」

 腕を絡め、身を添わせ。
 軽く抱き締める。
 心を宙に絵に描いて見せるかのように。

「いいのよ次から気をつけてくれればそれでね」
「ありがとう。……ただいま、愛しい貴女」

 ちなみにオールドガインは、あの後、裏社会の人の妻である女性にうっかり手を出してしまったうえ相手の男性に注意されても煽るような行動を繰り返し続けたために、酷い目に遭うこととなってしまったそうだ。


◆終わり◆
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