迫り迫られ

四季

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迫り迫られ

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「前々から思っていたことなのだが」

 寝室のベッドに腰掛けているウタのもとへ、ウィクトルは歩み寄る。

「なぜ結ばれても手繋ぎ止まりなのか、という件に関して」

 唐突な話題の提供に戸惑い、すぐには何も返せないウタ。そんな彼女を、ウィクトルは、そっとベッドに押し倒す。

「いきなり何の話……?」
「そろそろ、もう少し積極的になっても良いと思うのだが」

 戸惑ったままのウタに、ウィクトルは圧をかける。

 途中までは大人しくしていたウタだったが、やたらとかけられる圧力に耐えきれなくなり、声を大きくする。

「こういうのは嫌!」
「す、すまん、やはりこれは積極的過ぎーー」

 ウタはウィクトルの腕を引っ張り、彼の身体をベッドに押し付ける。

「下は嫌い」

 ウィクトルは何が起きたかもすぐには理解できず、ただただ愕然とするしかない。
 思わぬ形で戸惑う側となったウィクトルに顔を近づけ、ウタは少しばかり笑みを浮かべる。

「こっちでもいい?」
「え……あ、あぁ。べつに構わないが……」

 こうして、寝室は何ともいえない空気に包まれるのだった。


◆終わり◆
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