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後編

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 ◆


「そこの薬草! 取ってもらえる?」
「あ、はい~」
「ありがと! じゃ、後はケーキでも食べててね!」
「……調合を見ていても?」
「いいよ! あ、でも、ちょっと照れるかも」

 以降、私があの世界へ戻ることはなかった。

 そして今もルレンと共に生きている。

「すみません、見てしまって」
「いいよいいよ~」
「何かすみません、でも……私、こうして眺めているのが好きなんです。……って、あ! 仕事はいつでもきちんと手伝いますから! それは嫌じゃないですから!」

 ちなみに、アルハードと私の両親はというと。
 あの後、私に対する心ない行動を知ったルレンによって、罰をくだされた。

 アルハードはルレンの術によって生命を少しづつ吸い取られることとなり、徐々に体調を悪くしている。数年が経った今も辛うじて生きているようではあるが、毎日苦しみ、辛い思いをしながら生きているようだ。

 そして、私の両親も、痛い目に遭った。

 父は、アルハードと同じく、生命を吸い取られる術をかけられた。だがアルハードとは違ってみるみる弱り。そのまま衰弱していって、一年半もかからず亡くなってしまったそうだ。

 母は、何をしても失敗して災難に見舞われる術をかけられ、ことあるごとに残念なことになったことで心を病んでしまったそうだ。そんなある日、寝惚けて夜中に階段を上り下りしていたところ足を滑らせて二階から一階まで転落し、前から置いていた大きな象の置物に頭から突っ込んで。頭部を強く売ってしまったために数日後死亡したそうだ。

「ちょっといい?」
「何ですか」
「あそこの右から三番目の瓶、持ってきてくれないかな」
「取ってきます!」

 私はこれからもルレンと生きてゆく。

 彼の仕事を手伝いながら。
 相棒のように生きてゆく。

 もはや迷いはしない。

 この道こそが、私の道だから。


◆終わり◆
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