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38話 そろそろ出発
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旅行なんていつ以来だろう。
もうずっと行っていない気がする。
「リリィ、荷物まとめられた? もう行ける?」
「遅いのはそっち。こっちはもうとっくに終わってるから」
いざ目にして驚いた。
リリィの荷物は小さなバッグ一つだけだったのだ。
「え! それだけ!?」
「それが何?」
「ごめん、予想外に少なかったからびっくりしちゃって……」
「そういうこと」
ちなみにその小さなバッグは先日私が贈ったものである。
全体的に紺色でレース模様が少し付いている、筆箱くらいのサイズのバッグ。多分、ほとんど何も入らない。かなり小さいのだが、リリィにはデザインが似合う気がして、つい買って贈ってしまった。
リリィはそれをとても気に入ってくれている。
贈り物を気に入ってもらえるなんて、ありがたいことだ。
「荷物少なくない?」
「日和多過ぎ」
「えーっ!? 普通だよ!? 泊まりだもん、これくらいいるよ」
大きめの鞄と外出の際には常時持っている鞄、合計二つ。
多過ぎることはないと思うのだが。
リリィが少ないのだ。泊まりとなれば普通はこのくらい荷物が必要になるもの。女性が小さなバッグ一つで旅行へ行くという方が珍しい例だろう。
その後、私たちは、母親が待つリビングへと向かう。
部屋を出る際には照明やクーラーが付けっ放しになっていないか数回確認しておく。万が一付けっ放しになっていたら問題だから。念入りに確認してから、リビングへ。
「お待たせ! 準備できた!」
「まだ急がないわ」
「これでもう大丈夫。クーラーも確認したし」
「順調ね」
母親ももう荷物をまとめられたようだ。
グレー系のチェック柄がプリントされた大きめの鞄は既に床に置かれている。
「あ、そういえば。露澤さんもうすぐいらっしゃるそうよー」
「連絡あった?」
「えぇ。さっき電話が」
「そっか。じゃあもうすぐかな」
「そう思うわ」
その時ふと母親はリリィに視線を向けた。
「あら、リリィちゃんそれだけ?」
「……問題がありますか」
「ないわよ。ごめんね、ただ聞いてみただけなの」
数分後ローザはやって来た。
私たち三人は彼と合流し、彼が呼んでくれたタクシーに乗って出発。
「露澤さんがホテルに詳しいなんて、正直意外だったわ。ふふ、ごめんなさいね。失礼ですよね、こんなこと。でも驚いてしまって」
助手席にローザ、後部座席に私たち三人。
しかしよく喋るのは母親とローザだ。
私とリリィは緊張した面持ちのまま座っていることしかできない。
「いえいえ、そんなに詳しくは……」
「詳しいじゃないですか。だって今回も良いホテルがあるって」
「このホテル、旅館に近い雰囲気で、気に入っていたんです。それだけですよ」
「誘ってもらってごめんなさいねー」
母親とローザは喋っているが、リリィはじっとして黙っている。
「いえ。むしろ、急に誘って申し訳ないです」
「露澤さんは旅行がお好きなのよね」
「はい」
「そういえば前もお土産くれたわよねー」
「あ、はい」
「いつもありがとうね」
タクシーで直接目的地まで行くわけではないようだ。タクシーを一旦降りたその後も、まだ、数回乗り換えがあるらしい。本当に、目的地にまで、きちんとたどり着けるのだろうか。
もうずっと行っていない気がする。
「リリィ、荷物まとめられた? もう行ける?」
「遅いのはそっち。こっちはもうとっくに終わってるから」
いざ目にして驚いた。
リリィの荷物は小さなバッグ一つだけだったのだ。
「え! それだけ!?」
「それが何?」
「ごめん、予想外に少なかったからびっくりしちゃって……」
「そういうこと」
ちなみにその小さなバッグは先日私が贈ったものである。
全体的に紺色でレース模様が少し付いている、筆箱くらいのサイズのバッグ。多分、ほとんど何も入らない。かなり小さいのだが、リリィにはデザインが似合う気がして、つい買って贈ってしまった。
リリィはそれをとても気に入ってくれている。
贈り物を気に入ってもらえるなんて、ありがたいことだ。
「荷物少なくない?」
「日和多過ぎ」
「えーっ!? 普通だよ!? 泊まりだもん、これくらいいるよ」
大きめの鞄と外出の際には常時持っている鞄、合計二つ。
多過ぎることはないと思うのだが。
リリィが少ないのだ。泊まりとなれば普通はこのくらい荷物が必要になるもの。女性が小さなバッグ一つで旅行へ行くという方が珍しい例だろう。
その後、私たちは、母親が待つリビングへと向かう。
部屋を出る際には照明やクーラーが付けっ放しになっていないか数回確認しておく。万が一付けっ放しになっていたら問題だから。念入りに確認してから、リビングへ。
「お待たせ! 準備できた!」
「まだ急がないわ」
「これでもう大丈夫。クーラーも確認したし」
「順調ね」
母親ももう荷物をまとめられたようだ。
グレー系のチェック柄がプリントされた大きめの鞄は既に床に置かれている。
「あ、そういえば。露澤さんもうすぐいらっしゃるそうよー」
「連絡あった?」
「えぇ。さっき電話が」
「そっか。じゃあもうすぐかな」
「そう思うわ」
その時ふと母親はリリィに視線を向けた。
「あら、リリィちゃんそれだけ?」
「……問題がありますか」
「ないわよ。ごめんね、ただ聞いてみただけなの」
数分後ローザはやって来た。
私たち三人は彼と合流し、彼が呼んでくれたタクシーに乗って出発。
「露澤さんがホテルに詳しいなんて、正直意外だったわ。ふふ、ごめんなさいね。失礼ですよね、こんなこと。でも驚いてしまって」
助手席にローザ、後部座席に私たち三人。
しかしよく喋るのは母親とローザだ。
私とリリィは緊張した面持ちのまま座っていることしかできない。
「いえいえ、そんなに詳しくは……」
「詳しいじゃないですか。だって今回も良いホテルがあるって」
「このホテル、旅館に近い雰囲気で、気に入っていたんです。それだけですよ」
「誘ってもらってごめんなさいねー」
母親とローザは喋っているが、リリィはじっとして黙っている。
「いえ。むしろ、急に誘って申し訳ないです」
「露澤さんは旅行がお好きなのよね」
「はい」
「そういえば前もお土産くれたわよねー」
「あ、はい」
「いつもありがとうね」
タクシーで直接目的地まで行くわけではないようだ。タクシーを一旦降りたその後も、まだ、数回乗り換えがあるらしい。本当に、目的地にまで、きちんとたどり着けるのだろうか。
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