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前編

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 婚約者ルイス・キャストムに呼び出された私は、お気に入りのスカイブルーのワンピースでちょっとだけおしゃれをし、彼のところへ向かいました。

 あまり派手な服は着られません。
 彼が嫌うからです。
 けれどもある程度おしゃれはしたい、そこで、この服なのです。

「今日は呼んでくださりありがとうございます」
「あぁ」
「それで。伝えたいこと、とは?」
「婚約についてなのだが」

 彼は真面目な顔のまま続けます。

「君との婚約、破棄とすることにした」

 ……!!?

 驚いているうちに話は進んでゆきます。

「君より良い存在に出会ってしまったのでな、君とはもう終わりにすることにしたんだ」

 彼は嬉しそうにとある女性について語り出します。
 その女性は、麗しく性格も良く忠実で家柄も申し分ない、そうです。

 いやいや一方的にそんなことを説明されても……。

 不快になるだけなのですが……。

「ということで、婚約は破棄とする」

 最後に彼はもう一度そう言いました。

 なんと勝手な理由。
 呆れてしまいます。

「そうですか、分かりました」

 私は一刻も早く彼から離れたくなったので、婚約破棄を受け入れることとしました。

 生きていればまた良い出会いもあるでしょう。

 彼に執着する必要はないはずです。
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