婚約破棄され、猫になる。

四季

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婚約破棄され、猫になる。

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 告げられた婚約破棄。
 その心ない言葉が私の心を容赦なくへし折った。

 どうしてそんなことを言えるの?

 そんな問いを放っても、きっと無駄なのだろう。

 私にとっては重く深く傷つけられる言葉であっても、発している彼にしてみればなんということのないものなのだろうから。

 一方的に婚約破棄された私は悲しみの中にいた。

 世界は暗く。
 光はなく。
 希望の欠片さえ見当たらず。

 視界は真っ暗闇だった。


 ◆


 翌朝、自宅のベッドで目覚めると、私は猫になっていた。

 最初は驚いたし焦った。
 言葉も発することができないし。

 でも、のんびり過ごしているうちにこんな暮らしも良いのかもしれないと思えるようになってきて。

 で、私は、人間に戻るのは諦めて一匹の猫として生きることにした。

 猫は自由だ。
 何にも縛られない。

 鳴きたい時には鳴き声を発する。
 伸びたければ伸びをする。
 ぽかぽか窓辺で時間は気にせずお昼寝。

 これらは人間だった頃の私には味わえなかったもの。

 今はこの自由を満喫しよう。


◆終わり◆
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