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3話
しおりを挟むフォレットのことももちろん好きだが、ご両親のことも好きだ。
特に母親。
「え……それは、さすがに……ちょっと……すみません」
「急ぎ過ぎたかしら。てへっ」
「お茶目ですね」
「そうなのよね! くだらなーいって言われてしまうわ、たまに。でもこんな人間だから仕方ないのよね。許してくれる?」
「もちろんです、いつも温かく接してくださってありがとうございます」
結婚相手の母親というのは厄介な存在なのだろうと想像していたのだが、そんなことはまったくもってなかった。
実の両親と比べれば、彼女は天使のよう。
「もぅ、そんな風に言わなくていいのにっ。じゃ! 朝食ぱぱっと作っちゃうわね!」
「私もやります……!」
「あらいいのよ、座ってて? だってお掃除してくれたんでしょ?」
「あ……はい、少しだけですが」
「あっりがとぅ! じゃ、のんびりしててちょうだいねっ」
私はひだまりの中にいる。人の心の優しさというものにようやく触れることができて、それによって、居づらさのない日々というものを学んだ。それは平穏。刺激的なことはなくても幸せ、そういうものだ。同じに見える日々、穏やかな日々、そういったものこそが人生において一番偉大で尊い存在なのだと今は理解している。
私はこれからもこの道を歩いてゆきたい。
そして、親切にしてくれた人たちにお返しがしたい。
「起きた~」
「遅いわよ! フォレット!」
「え」
「彼女はもう掃除もしてくれてるんだからっ!」
「え、うそっ、ごめん」
「あんたは彼女に給仕しなさい!」
「厳し……」
「ほら、それ持っていって! 出してあげて!」
「あ、ああ、うん」
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