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2話
しおりを挟む「「あ」」
扉の向こう、絡み合っているアーベルとマレッカがほぼ同時に短い音のような声をこぼす。
「アーベルさん……これは一体……どういうこと、ですか」
問えば、彼ははああと長めの溜め息。
「ばれてしまったか……」
「ばれて、って……どういうことです……?」
「まぁもういいか。なら正直に言おう。俺はお前に魅力を感じず、他のもので発散する必要がある――それで彼女に、マレッカに、協力してもらっていたんだ」
いちいち失礼だなぁ。
「そうですか……」
「分かったか?」
「ええ、はい、理解しました」
「なら早く出ていってくれ。今はお楽しみの時間だから」
「それは……申し訳ありませんができません」
言えば、彼は眉間にしわを寄せる。
「何だと?」
その声には少量の苛立ちが滲んでいた。
「口ごたえする気か! 無礼な! 生意気な!」
「婚約、破棄します」
「……何だって?」
「ですから、婚約は破棄すると申し上げているのです」
マレッカが友人の婚約者を盗るような人だったということも、アーベルが簡単によそへ目をやるような人だったということも、どちらもショックだし悲しい。
そして、それと同時に、二人には幻滅した。
もう汚らわしいものとしか思えない。
「さようなら、アーベルさん」
「ま、待て! 待てよ!」
「知りません。私はもう……貴方のところへは戻りませんので」
「おい! 何勝手に! ふざけるな!」
それからもアーベルは何か叫んでいたけれど、もう何も返さなかったし、聞こうとさえしないようにしておいた。
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