婚約者の彼にも、良い子だと思っていた幼馴染みにも、幻滅しました。~今後はあなたたちとは関わらずに生きていきます~

四季

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「「あ」」

 扉の向こう、絡み合っているアーベルとマレッカがほぼ同時に短い音のような声をこぼす。

「アーベルさん……これは一体……どういうこと、ですか」

 問えば、彼ははああと長めの溜め息。

「ばれてしまったか……」
「ばれて、って……どういうことです……?」
「まぁもういいか。なら正直に言おう。俺はお前に魅力を感じず、他のもので発散する必要がある――それで彼女に、マレッカに、協力してもらっていたんだ」

 いちいち失礼だなぁ。

「そうですか……」
「分かったか?」
「ええ、はい、理解しました」
「なら早く出ていってくれ。今はお楽しみの時間だから」
「それは……申し訳ありませんができません」

 言えば、彼は眉間にしわを寄せる。

「何だと?」

 その声には少量の苛立ちが滲んでいた。

「口ごたえする気か! 無礼な! 生意気な!」
「婚約、破棄します」
「……何だって?」
「ですから、婚約は破棄すると申し上げているのです」

 マレッカが友人の婚約者を盗るような人だったということも、アーベルが簡単によそへ目をやるような人だったということも、どちらもショックだし悲しい。

 そして、それと同時に、二人には幻滅した。

 もう汚らわしいものとしか思えない。

「さようなら、アーベルさん」
「ま、待て! 待てよ!」
「知りません。私はもう……貴方のところへは戻りませんので」
「おい! 何勝手に! ふざけるな!」

 それからもアーベルは何か叫んでいたけれど、もう何も返さなかったし、聞こうとさえしないようにしておいた。
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