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1話「ぱっとしない人生」
しおりを挟む私エリカ・アルフィナは元々出自不明の捨て子だった。
しかし幼い頃に国による大規模調査で『伝説の女神』の生まれ変わりだということが認められ、それによって人生は大きく変わった。
そこそこ歴史あるアルフィナ家に養子として引き取られた私は、それなりに貧しくない人生を歩めることとなったのだ。
そして、十八の春、国王の息子アイスライトと婚約。
その時から私はこの国のために生きてゆくこととなった――のだが、残念なことにアイスライトは私を愛してはくれなかった。
というのも、その時アイスライトには既に愛している女性がいたのだ。
名はガーネットという。
ただ、その女性は元侍女であり、国王の息子とは身分が大きく違っていて。それゆえ結ばれることはできず。王子である彼との交際がばれ侍女の立場から切り捨てられた後はずっと彼の傍をうろうろするだけの女となっていて。その関係は私が彼の婚約者となった後も当然のように続いていた。
「貴女がエリカね?」
「あ、はい」
「あたくしはガーネット。名くらいは聞いたことがあるでしょう」
「ええと……」
「アイスライト様に誰よりも愛されている女よ!」
「あっ、そうでしたね」
ガーネットは好戦的な性格だった。
顔だけ見ても気が強そうなのだが。
見た目と中身は違う、ということはない――彼女はそんな女性だった。
「何よその態度! 生意気だわ」
「私は一番愛されたいとは思っていないですので……その、そのような顔をなさらないでください」
「はぁ? 何よその上から目線!」
「私は彼の婚約者となりました。が、それは生まれ変わりうんぬんの伝説ゆえです。愛し合っていたからではありません。なので安心して――っ!!」
彼女は非常にカッとなりやすいタイプで、会話の途中でビンタしてくることも少なくはなかった。
「余裕ある風なこと言ってんじゃないわよ!!」
これさえなければまだ良いのだが……。
「聞くに、貴女ってもともとどこの出かも分からない捨て子なのよね?」
「はい」
「あっははは!! ふん、くずじゃない」
「え……」
「まぁいいわ。貴女はあたくしより下だから。勘違いなさらないでちょうだいね」
――こういうことはよくあることだった。
だからもう慣れていたのだけれど。
ある日、急にアイスライトに呼び出されて、城の裏庭へ向かうと。
「来たかエリカ」
「相変わらずばっかみたいな顔をしているわね」
アイスライトとガーネットが二人で待っていた。
これには驚いた。いや、二人が一緒にいるなんてよくあることなのだが。でもまさか二人して私を待っているなんて、と、驚きを隠せなかった。そのような展開は一切想像していなかったのだ。
「伝えたいことがある」
「はい」
「エリカ、お前との婚約は破棄とする」
アイスライトは静かにそう告げた。
ああ、そうか。
思っていたより早く、もうその時が来てしまった……彼は結局私より彼女を選ぶのか。
城の裏庭は崖に近く、時折強い風が吹く。
その中でそんなことをぼんやりと思った。
「そうですか……承知しました」
「ああ、それとな」
「まだ何かあるのですか?」
すると突然ガーネットが腕を引っ張ってくる。
「邪魔なのよ! 貴女!」
何事? と思っているうちに崖側に身を寄せられてしまう。
「ここで消えなさい! 貴女は今日ここで事故死するのよ!」
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