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3話「復讐の意思、彼の過去の闇」
しおりを挟むロゼットはアイスライトの情報を握っていた。
それは、彼の行動、そして――悪い行いの数々であった。
「協力してくださってありがとうございます、ロゼットさん」
「いえいえ」
「これからよろしくお願いします」
投獄されていた私だったが、ロゼットの協力もあって何とか牢から出ることができた。金も少々使わせてしまったようだが。でも、ロゼットは、それでも私を外に出してくれた。
――共に復讐するために。
今、私は、ロゼットと同じ屋根の下で暮らしている。
もちろん二人きりではない。
この建物には彼の仲間のような人たちもいるのだ。
「それにしても……災難でしたね、婚約したがために二人から殺されかけたとは」
「はい……」
「ああいう人たちはいない方が良いですよね、この世に」
「……ロゼットさんて、少し過激な方ですね」
ある昼下がり、私がそんなことを言うと、彼はふっとどこか寂しげに笑みを浮かべた。
「僕はかつて、アイスライトに妹を壊されたんですよ」
やがて語り出すロゼット。
彼にはかつて妹がいたらしい。とても可愛らしい娘だったそうだ。で、その愛らしさゆえに王子アイスライトに目をつけられて。妹はアイスライトから誘われて定期的に会うようになっていったそうだ。段々と関係は深まり、心重ね合わせて歩き出すかのように思われたのだが――ある時アイスライトは急に妹を切り捨てたのだそう。もう会わない、それだけ言って、以降アイスライトは彼女を拒否しごみを見るような目で見るだけとなったらしく。
「それによって、妹は壊れてしまったのです」
「……そんな」
「可愛らしかったあの娘はもういなくなってしまいました。いつも泣いてばかりで、心を病み、最終的には自ら死を選んで……」
話を聞いて、心が震えた。
「ひ、酷いです……! そんなことって……」
身勝手に遊ぶだけ遊んで捨てるなんて、そんなのは酷すぎる。
「それでロゼットさんは復讐を望んでいらっしゃるのですね」
「ええそうです」
ロゼットの心が少し分かった気がした。
もし私が兄だったとしても、きっと同じように怒ったと思う。
「ですが、アイスライトももうじき社会的に終わるでしょう。……ふふ、楽しみです」
「情報を流したんですよね」
「ええ、こちらがやるべきことはすべて完了しています。あの男の悪行、それらは近く世に知れ渡ることでしょう」
その時はもうすぐ来る。
アイスライトの悪しき行いが世に出る時は近い。
◆
ある新聞社から流れた情報。
それは王家を震撼させた。
そして多くの国民にも衝撃を与えた。
――アイスライトの悪行。
彼は昔から気の向くままに女性に手を出すところがあった。で、いつも自分から誘っておきながら最後は一方的に切り捨てるのだ。切り捨てる理由は――飽きたから、惚れられたら冷めた、鬱陶しくなった――など様々だが。おしまいの時になって女性が別れたくないと言っても完全無視、その点は共通していた。また、中には強く「別れたくない! 別れるというのなら情報を流す!」と言った女性もいたようだが、その女性などは監禁された後に闇に葬られ謎の死を遂げたのだそうだ。
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