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8話「復讐の果て」

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 あの後間もなく、アイスライトは処刑されることとなった。

 王族だった者の公開での処刑。
 それはもうこの国において十年以上なかったことで。

 けれども流れのままに話は進み。

 そして彼は人々の目の前でこの世を去ることとなったのである。

 アイスライトの最期を一目見ようと広場に集まった者たちは、まるで酒でも飲んできたかのような少々歪なテンションでその時を待つ。
 そこへ連れられてくる、四肢を拘束されたアイスライト。
 彼の登場によって場の雰囲気はより一層高まってゆく、激しい路線のコンサートのように。

 アイスライトはその時もまだ「俺は悪くないんだ! 信じてくれ誰か!」とか「俺の何が気に食わないんだ!」とか「俺が金持ちだから嫉妬してるんだろ! 皆! よってたかって、卑怯だぞ! 金もろくにないくせに!」とか喚いていた。

 だが何を言おうが無駄。
 彼はそのまま最期の場へと向かわされる。

 ――そして、彼の首は断ち切られた。

「……終わりましたね」
「ですね」

 アイスライトはこの世から消えた。

 すべての悪の源はようやく消滅したのだ。

 物陰からロゼットと共にその様子を見つめていた私は、空を見上げる。

「とても綺麗な空です」

 意味もなく呟いて。
 それから少し恥ずかしい気持ちが込み上げる――けれども隣にいる彼の顔を見て、恥らいなんてちっぽけなものだと気づいた。

 というのも、ロゼットはとても穏やかな顔をしていたのだ。

 彼は前から味方に対しては優しかった。
 でもここまで穏やかな顔をしているところを見るのは初めてな気がした。

 復讐の果て、彼の憎しみは消えたのだろうか。

「エリカさんは詩的ですね」
「そうですか!? ……すみません、何だかちょっと変で」
「いえ、良いことと思って言ったのですよ」
「あ……」
「僕にはあまりない感性で、でも、そういうところ尊敬します」

 ……これから、どうなってゆくのだろう。

 私も、彼も。

 目指してきたもの。
 それはもう達成され終わりを迎えた。

 ここからは新しい道へ。

「……でも、少し悲しいですね」
「何です?」
「たとえ復讐が達成されても、アイスライトが死んでも……ロゼットさんの妹さんは返ってこないわけですから」

 思いをこぼせば。

「いいんです、仕方のないことですよ」

 少し間を空けて彼はそう返してきた。

「……そんなことは、はじめから分かっていたことですから」
「でも」
「これはあくまで自己満足なんです。僕がやりたいからやった、それだけのこと。それ以上でもそれ以下でもありません」

 その時ふと思いつく。

「あっ、少し良いですか?」
「はい」
「妹さんのお墓はあるのでしょうか」
「え」
「どこかに。……今まであまり聞いたことがなかったような気がして」

 ロゼットは戸惑ったような顔をしたけれど。

「ありますよ、小さいですが」

 はっきりと答えてくれた。

「今度、報告に行くというのはどうでしょう!?」
「ええ、それは、もちろん――って、まさか二人でですか!?」
「はい」
「……ですが。そのような会、エリカさんに得は一切ないのでは」

 困惑したままに彼に向かった。

「お礼を言いたいんです」

 笑顔で告げる。

「お兄さんには大変お世話になりました、ありがとうございました。って」
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