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1話「私の人生って、これでいいのかな」
しおりを挟むこの国においては魔法の才能が地位となることも多い。
なぜって、強さこそ偉さだからだ。
と言っても強ければ何でもいいというわけではなく、この国においては物理的な戦いは野蛮とされており、それゆえ魔法で強い者の方が偉大であると認識されるのである。
そんな国に最強の魔法の才を持って生まれた私ルージュ・ルーカスは恵まれていたのだと思う。
我が火炎魔法の威力は凄まじいものだ。
その気になれば王都だって焼いてしまえるだろう、それほどの力を秘めている。
そして、だからこそ、王子ベルヴィオの婚約者に選ばれたのだ。
「貴女様には、将来の国王であるベルヴィオと結ばれてほしい。そうすることでこの国は安泰となるのだ」
国王からそう頼まれて、私はベルヴィオとの人生を選んだ。
順調だったのだ。
何もかもすべてが。
――王子ベルヴィオが一人の侍女と仲良くなるその時までは。
「ねえ聞いた? ベルヴィオ様、昨日もエルフィ連れ込んでたみたいよ」
「ええっ、またなの!? うっそでしょ、ないわー」
毎日のようにそんな嫌な噂話を聞いてしまう。
城内での暮らしも段々憂鬱になってきた。
いつからかベルヴィオと侍女エルフィが特別な関係になっていったのだ。そして彼は私を少しも見なくなった。それまではたまに一緒にお出掛けしたりお茶をしたりといった交流はあったのに、エルフィの登場によってそれすらも奪われて。もはや私たちの婚約者同士という関係は形だけ、抜け殻のようなものとなってしまっている。
時折用事で話しに行くことはあるのだけれど。
「ベルヴィオさん、今度のお茶会の件なのですけど」
「何それ今じゃなくていいでしょ」
彼はいつもそっけない。
そう、彼は私のことなんて見もしない。
いつからだろう、こんな風に嫌われてしまったのは。というより、私何かした? 何もなかったような気がするのだが。なぜ、何もないのに、ここまで冷ややかに接されなくてはならないの? 疑問でしかない。
「いえ、ですが、確認と許可をお願いしたいと思いまして。どうか一筆お願いします」
「鬱陶しい! さっさと去ってよ」
「あ……」
「俺はこれから忙しいんだ! お前は婚約者になれたんだから満足だろ? 婚約破棄されてないだけましだと思って形だけの婚約者で黙ってろよ!」
私がお願いしたわけではない。
私がどうしても彼と生きたかったわけではない。
なんなら言ってきたのは向こうだ、国王が頼んできたのではないか。
そんなに私が嫌なのなら、彼はその時にはっきりと拒否するべきだった。嫌だ、と言うべきだったのだ。後付けでないなら、だが。力のある王子なのだから拒否くらいできただろうに。
「ま、そういうことだからさっさと出ていってくれな」
とはいえ、私には主張する権利なんてなくて。
――ここは檻の中。
私はただ黙っているしかない。
不快でも、辛くても、それでも……。
――私は一体何をしているのだろう?
疑問を抱いても。
それを口にすれば怒られる。
……私の人生って、これでいいのかな?
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