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前編
しおりを挟む「大丈夫ですか!? しっかりしてください! 今手当てしますから!!」
癒しの魔法使いである若い娘アルリーナは、ある日、人の世界に迷い込んでしまった魔人が倒れているところを発見した。
魔人は人と共には暮らせない。
二つの種族は区域ごとにすみわけをしているのだ。
しかし時折こうして相手のエリアに入り込んでしまう者もいて――そういった者は大抵見張りに殺されたり怪我させられてそのまま死んだりするのだ。
ただ、この魔人は、負傷してはいたがまだ生きていた。
「怪我が酷い……ですがすぐに治します! 安心してください!」
アルリーナは癒しの魔法を使った。
そうして魔人が負った怪我を治した。
「……あなたが助けてくださったのですか?」
「ええそうです、魔法で」
「あなたは……人、ですよね? なのに魔法が……使えるのですか?」
「はい、人の中にも魔法が使える者はいるのです」
「そうでしたか……それは、それはありがとうございました」
「いえ! 回復されたようで何よりです!」
◆
翌日アルリーナは朝早くに婚約者モルトに呼び出された。
「お前、昨日魔人と一緒にいただろ」
「あ、ああはい、そうです。しかしあれはたまたま出会っただけです。倒れていらっしゃたので怪我を治して――」
「穢れている!!」
「え……?」
「アルリーナ、お前はもう俺の前にいていい人間ではない!!」
荒々しく叫ぶモルトの眉間には深いしわが複数刻まれていた。
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