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前編

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「君みたいな草刈りにばかり詳しいような貧乏臭い女とはやっていけないよ。よって、婚約は破棄とさせてもらうね。ま、君には僕に相応しいほどの魅力はなかったってことさ。恨むなら精々魅力不足だった自分を恨んでくれよな」

 その日、私は婚約破棄された。

 彼オードラーと共にあった一ヶ月半ほど、私はいつも緊張状態にあった。というのも、彼はことあるごとに驚くほど細かいことを指摘してくるのだ。少しでも気に食わないことがあればことあるごとに言ってくる。それこそ、理不尽に思えるようなことであっても。だから彼といるとのんびりしていられる間はないのだ。

 それからの解放、という意味では、婚約破棄はありがたいものだった。

「ただいまー」

 私は取り敢えず実家へ帰った。

「おかえりー……って、え!? 早くない!?」

 実家へ帰った私を一番に迎えてくれたのは母親だった。

「驚かせてごめん、母さん」
「い、いや、いいんだけれど……随分早かったわね」
「実は婚約破棄されて」
「え!? こ、こここ、婚約破棄!?」

 母親は狼狽えていた。

「だから私、また、ここに戻って暮らしたいの」
「い、いいけど……」
「ありがとう母さん」

 こうして私はまた実家暮らしを再開する。

 とはいえ、一度家から出たこともあり、また家で養ってもらうのは少々申し訳ない気もして。そこで私は、草刈りの最中に発見された使用用途のある草を集めて売る仕事を始めた。両親は気を遣わなくて良いと言ってくれたけれど、家のため己のために私も少しは銭を稼ぎたかったのだ。すべて親に頼りっきりというのは嫌だった。

 そうして始めた草売り屋。
 最初はかなり小規模で買い手もほぼいないに近かったのだが、こつこつ活動を続けているうちに徐々に買い手が増えてきて。

 一年もすれば、買ってくれる人はかなり増えた。

 草売りは順調。
 このままいけば生活費はこの稼ぎで賄えるようになっていくかもしれない。
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