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婚約破棄なら支援打ち切りです。……え? 支援だけ継続? いやいや、何を言っているのですか。それはないですよ、絶対に。
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我が家は長年彼の家を支援してきたというのに。
「俺、婚約破棄するって決めたんだ」
婚約者の彼ウィーデリーはある日突然平然とそんなことを言い出した。
「何ですって……?」
「いやだから婚約破棄」
「待って! おかしいじゃないそんなの。あまりにも急過ぎよ。何? 何かあったの?」
ウィーデリーはそんなことを言い出せる側ではない。にもかかわらずそんなことを言い出した。とすれば何か事情をあるのだろう、そう考えて尋ねてみたのだけれど。
「いやべつにー」
彼はそんなことを返してくるだけ。
「何でも、ない?」
「うん」
「ならなおさらどうかしてる……」
「いやどうもしてないよ。ただ君との関係を終わりにしようかなーって思っただけ」
ウィーデリーは呑気だった。
「そんなことをしたら……支援は打ち切りになるのよ? 親御さんだってきっと困るわ。それでいいの? 貴方の生活だった怪しくなる……」
「え? いやいや、支援だけは継続でしょ」
「……呆れた、何を言い出すの」
「支援は続けてくれるよな? 情けで、さ。な? いいだろ? どうせ君の家金持ちなんだし。ちょっと支援してるくらいじゃべつに痛くも痒くもないだろ?」
一度溜め息をこぼして、それから、彼を睨む。
「そんな都合のいい話、あるわけがないでしょう」
婚約が破棄になるのであれば、支援だってそこで終わりよ。
そういえば彼は焦り出すけれど。
「もういいわ。じゃ、そういうことね。さよならウィーデリー、もう二度と会うことはないでしょう」
……もう手遅れよ。
「ま、ままま、待って! 嘘! 嘘だよ! ジョーク!」
「……そうは思えないわね」
「待ってよ! 待って、待ってよ! お願いお願いお願いっ。俺たちの仲だよ!? 支援打ち切りなんて、そんなこと、あるわけないよね!?」
ウィーデリーは今になって焦っている。
でももはや遅すぎるのだ。
既に取り返しのつかない状況になってしまっている。
「貴方は言ってはいけないことを言ったのよ」
こうして婚約は破棄に、そして、我が家からの支援も打ち切りとなった。
ウィーデリーの両親は何度も謝罪してくれた。
けれども何度説得されても「もう彼のもとへは戻りません」としか返さなかった。
だって、ウィーデリーのところへ戻っても、私には得はないのだもの。
◆
ウィーデリーはあの後両親から酷く叱られ、それに耐え切れず家出した夜に入ってはいけないところへ踏み込んでしまい山賊に襲われてそのまま死亡したそうだ。
彼の人生、その終わりは、あまりにもあっさりとしたものであった。
一方私はというと、今、国内有数の大企業の子息と婚約している――関係性は良好、彼となら共に歩んでゆけるという思いも確かに持てていて――この道はきっと幸せへと繋がっていると信じられている状態だ。
◆終わり◆
「俺、婚約破棄するって決めたんだ」
婚約者の彼ウィーデリーはある日突然平然とそんなことを言い出した。
「何ですって……?」
「いやだから婚約破棄」
「待って! おかしいじゃないそんなの。あまりにも急過ぎよ。何? 何かあったの?」
ウィーデリーはそんなことを言い出せる側ではない。にもかかわらずそんなことを言い出した。とすれば何か事情をあるのだろう、そう考えて尋ねてみたのだけれど。
「いやべつにー」
彼はそんなことを返してくるだけ。
「何でも、ない?」
「うん」
「ならなおさらどうかしてる……」
「いやどうもしてないよ。ただ君との関係を終わりにしようかなーって思っただけ」
ウィーデリーは呑気だった。
「そんなことをしたら……支援は打ち切りになるのよ? 親御さんだってきっと困るわ。それでいいの? 貴方の生活だった怪しくなる……」
「え? いやいや、支援だけは継続でしょ」
「……呆れた、何を言い出すの」
「支援は続けてくれるよな? 情けで、さ。な? いいだろ? どうせ君の家金持ちなんだし。ちょっと支援してるくらいじゃべつに痛くも痒くもないだろ?」
一度溜め息をこぼして、それから、彼を睨む。
「そんな都合のいい話、あるわけがないでしょう」
婚約が破棄になるのであれば、支援だってそこで終わりよ。
そういえば彼は焦り出すけれど。
「もういいわ。じゃ、そういうことね。さよならウィーデリー、もう二度と会うことはないでしょう」
……もう手遅れよ。
「ま、ままま、待って! 嘘! 嘘だよ! ジョーク!」
「……そうは思えないわね」
「待ってよ! 待って、待ってよ! お願いお願いお願いっ。俺たちの仲だよ!? 支援打ち切りなんて、そんなこと、あるわけないよね!?」
ウィーデリーは今になって焦っている。
でももはや遅すぎるのだ。
既に取り返しのつかない状況になってしまっている。
「貴方は言ってはいけないことを言ったのよ」
こうして婚約は破棄に、そして、我が家からの支援も打ち切りとなった。
ウィーデリーの両親は何度も謝罪してくれた。
けれども何度説得されても「もう彼のもとへは戻りません」としか返さなかった。
だって、ウィーデリーのところへ戻っても、私には得はないのだもの。
◆
ウィーデリーはあの後両親から酷く叱られ、それに耐え切れず家出した夜に入ってはいけないところへ踏み込んでしまい山賊に襲われてそのまま死亡したそうだ。
彼の人生、その終わりは、あまりにもあっさりとしたものであった。
一方私はというと、今、国内有数の大企業の子息と婚約している――関係性は良好、彼となら共に歩んでゆけるという思いも確かに持てていて――この道はきっと幸せへと繋がっていると信じられている状態だ。
◆終わり◆
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