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7話「長い長い夜が明けました」
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そして翌朝。
「いやぁー、昨夜はご心配お掛けしまして! スミマセンでした!」
明るい声で目を覚ます。
うとうとしていた私の意識を現実へ引き戻したのはずっと聞きたかった声。
「ポポさん!」
目の前には確かに彼がいた。
ずっと身を案じていた彼、キノコみたいな姿のポポ。
彼は頭部付近に数個絆創膏を貼ってはいるがそれ以外には特には大きな怪我はなさそうな様子だ。
「あ……」
彼の顔を見られて、安堵して、でもそれと同時に目からは涙が。
「え、え、ええっ、エーメラ様ぁッ!?」
「……ごめんなさい」
「え? やや! どうされました!? もしかして自分、何かやらかしてッ!?」
おろおろなるポポ。
「違うんです」
言いながら、腕で涙を拭う。
鼻の奥が詰まるように熱い。
「嬉しくて。……貴方が無事で、本当に……良かった」
いきなり泣かれたからかポポは狼狽えていた。だがそうなるのも無理はないだろう。そんなことを一切想定していない状態で急に相手が泣き出したりしたら、きっと誰だってあわあわなってしまうに違いない。
「あの……自分のことを、そんなにも?」
困惑したような顔で問うポポに。
「心配でした! だって、だって……もし何かあったら、と!」
もう彼の顔を見られないかもしれない。そう思った時、私の中で何かが変わった。何が起こったのかは私にもよく分からない。ただ、何かが変わり何かが芽生えたことだけは事実。私の中で彼は今特別な存在になっているのだ。
……いや、もしかしたら、もっと前から?
「エーメラ様、そんな風に思ってくださっていたなんて……それは、本当に、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした」
彼は最後まで言いきって、それから少し頬を赤らめた。
「……お気遣い、ありがとうございました」
どこか恥ずかしそうで、でも嬉しそうな、そんな顔をするポポだった。
◆
エーメラが去ったノーワール王国はやたらと災難に見舞われるようになっていた。
また、王家に様々な問題が発生し、それによって民らからの王家への信頼は地に堕ちることとなる。
特に、王子ノヴェルの新しい婚約者エリザビアの豪遊は一般市民より批判を受けた。
エリザビアは元々下級貴族の娘であった。本来であれば王子に近づけるような階級ではないし王子と婚約するなんてことはあり得ない立場の人間である。しかし彼女は王子の妻となることに執着しており、使えるものはすべて使って王子へ接近。じわりじわりと追い詰め、逃げ場をなくして、ついに王子を捕まえたのだ。
そこまでは完全にエリザビアの思い通りであった。
「いやぁー、昨夜はご心配お掛けしまして! スミマセンでした!」
明るい声で目を覚ます。
うとうとしていた私の意識を現実へ引き戻したのはずっと聞きたかった声。
「ポポさん!」
目の前には確かに彼がいた。
ずっと身を案じていた彼、キノコみたいな姿のポポ。
彼は頭部付近に数個絆創膏を貼ってはいるがそれ以外には特には大きな怪我はなさそうな様子だ。
「あ……」
彼の顔を見られて、安堵して、でもそれと同時に目からは涙が。
「え、え、ええっ、エーメラ様ぁッ!?」
「……ごめんなさい」
「え? やや! どうされました!? もしかして自分、何かやらかしてッ!?」
おろおろなるポポ。
「違うんです」
言いながら、腕で涙を拭う。
鼻の奥が詰まるように熱い。
「嬉しくて。……貴方が無事で、本当に……良かった」
いきなり泣かれたからかポポは狼狽えていた。だがそうなるのも無理はないだろう。そんなことを一切想定していない状態で急に相手が泣き出したりしたら、きっと誰だってあわあわなってしまうに違いない。
「あの……自分のことを、そんなにも?」
困惑したような顔で問うポポに。
「心配でした! だって、だって……もし何かあったら、と!」
もう彼の顔を見られないかもしれない。そう思った時、私の中で何かが変わった。何が起こったのかは私にもよく分からない。ただ、何かが変わり何かが芽生えたことだけは事実。私の中で彼は今特別な存在になっているのだ。
……いや、もしかしたら、もっと前から?
「エーメラ様、そんな風に思ってくださっていたなんて……それは、本当に、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした」
彼は最後まで言いきって、それから少し頬を赤らめた。
「……お気遣い、ありがとうございました」
どこか恥ずかしそうで、でも嬉しそうな、そんな顔をするポポだった。
◆
エーメラが去ったノーワール王国はやたらと災難に見舞われるようになっていた。
また、王家に様々な問題が発生し、それによって民らからの王家への信頼は地に堕ちることとなる。
特に、王子ノヴェルの新しい婚約者エリザビアの豪遊は一般市民より批判を受けた。
エリザビアは元々下級貴族の娘であった。本来であれば王子に近づけるような階級ではないし王子と婚約するなんてことはあり得ない立場の人間である。しかし彼女は王子の妻となることに執着しており、使えるものはすべて使って王子へ接近。じわりじわりと追い詰め、逃げ場をなくして、ついに王子を捕まえたのだ。
そこまでは完全にエリザビアの思い通りであった。
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