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9話「少しずつでもお返しがしたいです」
しおりを挟む「これを運んだら良いですか」
「あの……本当に、手伝ってくださるのですか?」
「はい!」
「えっと、その、ですね……手伝わせていたなんてことが陛下にばれたら怒られてしまいそうで……」
あれからはまた穏やかな時が流れている。
ぼや騒ぎも幸い被害はそれほどなかったし、ポポとも再会できたし、問題は何一つなかった。
「その際には私からきちんとお話しします」
近頃私は侍女の仕事を手伝うことを積極的に行っている。
「では運びますね」
「重いのでは……?」
「大丈夫です、私これでも重いものそれなりには持てるんですよ」
「お怪我なさらないでくださいね」
「はい! 落とさないよう気をつけて運びます」
侍女らには申し訳なさそうな顔をさせてしまうこともある。それを目にしたら勝手なことをして悪いなと思うこともあることはあるのだが。ただ、私はどうしてもここに住まわせてもらっているお返しがしたくて、だから小さなことでも手伝わせてほしいと考えているのだ。
異種族の私を受け入れ、温かく接してくれ、何をするでもないのにこの地に滞在することを許してくれている――そんな優しい者たちにお礼がしたい、それが私の思いなのである。
そんなことを思いつつ荷物を運んでいると。
「あ! エーメラ様!」
廊下の向こうから偶然見慣れた人物が歩いてくるのが見えた。
「こんにちは、ポポさん」
「また荷物運びをされているのですかッ!?」
「はいそうです」
するとポポは何やら急にもじもじし始める。
何か言いたいことがあるのかな? なんて思って、しばらく足を止めて待っていると。
「あ、えと、その……お手伝い、しましょうか……?」
やがて彼はそんな提案を口にした。
「え、いいですよそんなの。これは皆さんへのお礼でしていることですから。ポポさんを巻き込むわけにはいきません」
一旦そう返すけれど。
「でっ、ですがっ……女性にその荷物はさすがに重いのでは、とッ……思い、まして」
ポポはまだ引き下がらなかった。
ここまで言ってくれるのなら頼んでみようか。
そんな思いが芽生えてくる。
「では、こちらをお願いしても良いですか?」
「あ、ああっ、はいっ! もちろん! もちろんですッ!」
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