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後編

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「勝手ね」
「彼女を愛してるんだよ! 彼女が可愛いんだ! 好きなんだ! ……そのくらい自由にさせてくれよ」

 ごねている様は子どものよう。

「ならもう協力できなくなるけれどいいのね」
「いいさ!! 愛のためならすべてを捨てる!!」

 愚かな人。
 そう思わずにはいられない。

 私の魔法がなければ今ほど設けることはできないというのに。

 それでも愛を取るのか。
 私という人間を捨ててまで。


 ◆


 あれから数ヶ月、リボールの商売は急激に悪い状況となり、多額の借金だけが残る状態となってしまったそうだ。

 彼は今、借金取りに追い掛け回される日々らしい。

 で、あの女性は、借金取りに誘拐されたらしい。
 きっと今頃売り飛ばされているのだろう。
 そういう話はよく聞く、この国では珍しいことではない。

 彼はもう愛する人と生きられない。

 それどころか胸を張ってまともの生きることさえできないのだ。

 怯えながら生きてゆく。
 きっと辛い日々だろう。
 生きれば生きるほど苦しみは積み重なってゆくというものだ。

 ま、私を手放したのは彼だから。自業自得なのだけれど。


 ◆


 あれから八年、私は今、高位貴族の妻として生きている。

 二人の子にも恵まれ。
 穏やかな幸福を手に入れることができている。


◆終わり◆
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