1 / 2
前編
しおりを挟む私エリュシアには婚約者がいますの。
同じ年の栗色の毛が愛らしい青年オウヴィですわ。
彼は学園時代に知り合った男性で、卒業後に仲良くなって、それで婚約するに至りましたの。
ただ、悲しいことに、彼の父親には借金がありまして。そのような状態で結婚することなどできない、そういう話なりましたので、その借金は我が家が代わりに返済しましたわ。ただし、オウヴィが一生私と結婚生活を続けるという条件付きで。
けれどもいつからか彼の心は変わっていってしまいまして。
「ごめんエリュシア、ボク、君との婚約は破棄とするよ」
婚約期間中のある昼下がり、オウヴィはそんなことを言ってきたのです。
約束は絶対。
普通はそういうものでしょう。
けれども彼から話を聞いていると、どうやらもう私のことだけを大事にして想うということはできない様子。
何でも、私より顔が良くて好みにぴったり合う女性と巡り会ってしまったとかで――もうその女性のことしか考えられなくなってしまったのだそうです。
「それでも良いですわ。けれど、そうなれば、代わりに返済した借金の分のお金は返していただくこととなりますわよ」
「ボクが一生かけて返すよ……」
「いいえ、すぐに、ですわ」
「え!?」
「あの時サインをいただいた書類には、速やかに一括で返すこととする、と書いてありますもの」
オウヴィの顔が青白くなってゆくのが手に取るように分かります。
「書類にサインしたのですから……もちろん、そのおつもりですわよね?」
そう言って微笑んでやれば。
「……わ、分かった」
彼はそう言うしかありませんでした。
でもそれは当然のこと。
なぜって書類にサインしたのは彼自身だからです。
己の行動に責任を持つというのも大切なことでしょう?
彼もまた、己の行動と選択には責任を持たなくてはならないのです。
0
あなたにおすすめの小説
ある早朝、耳もとにひんやりとした感触――って、え!? これ何ですか? どういうことなんです!?
四季
恋愛
ある早朝、耳もとにひんやりとした感触――って、え!?
これ何ですか? どういうことなんです!?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
四季
恋愛
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。
どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
ちょっと、いとこ!? ……何をしてるのですか、私の婚約者と二人きりで。 ~そういうのを一般的に裏切りというのですよ?~
四季
恋愛
ちょっと、いとこ!? ……何をしてるのですか、私の婚約者と二人きりで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる