小鳥が飛んでゆく。 ――そう、私は今日、愛おしい人と別れた。

四季

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小鳥が飛んでゆく。 ――そう、私は今日、愛おしい人と別れた。

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 小鳥が飛んでゆく。

 ――そう、私は今日、愛おしい人と別れた。

 彼と私は婚約していた。
 かつて未来を誓い合った、けれど、それすらも永遠に守ることはできず。

 ついにその時が来て。

 彼は言った。

 もう終わりにしよう、と。

 そうして婚約は破棄となった。
 すべて終わったのだ。
 この二人が道を行く物語には想像を越えた近いところでの終幕があったのだ。

 楽しかったあの頃、いつだって、彼と一緒にいれば眩しい未来を見据えられた。それは夢のようで、一種の幻のようでもあって。けれども愛おしい温もりのその中で手を繋げば幸せ、それ以上など求めようとは思わないほどに。

 舞い散る花を見た。
 風が吹けば無数の花弁が舞い上がる花畑ではしゃいだ。

 痛いほどの日射しの下で語らった。
 好きなもののこと、好きな本のこと、など、いろんなこと。

 でも。

 それらももう、すべて――あの花畑で見た花弁たちのように、どこかへ飛び散って消えてしまった。

 もっとずっと笑いたかった。

 彼と共に歩みたかった。

 でももう叶わないのだと気づいて、滴をこぼす。

 悲しみの粒を抱えて見上げた空には、白い鳥が何羽も飛んでいた。

「……私もあんな風に飛べたら良かったのに」

 もしも翼があったなら、きっと、どこか遠いところへ飛んでゆけただろう。どれほど辛くとも悲しくとも。美しい空を懸命に飛んでいればいつかは心晴れたはず。

 そんな風に生まれたかった。
 何を言っても無駄だけれど。

 それでも、あんな風に自由に飛び回れたら――。

 私はきっと何度でも願うだろう。

 愛する人との未来を。

 そして、あの遥か上空に在る鳥たちのような自由を。


◆終わり◆
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