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前編

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「婚約破棄、ですか?」

 ある日のこと、婚約者である三つ年上の男性ガーランドに急に呼ばれたと思ったら婚約破棄を告げられた。

 最初は信じられなかった。
 本気か? と。
 何かの意図で冗談を言っているのかと思ったくらいで。

 でも彼は真剣だった。

「君よりも僕に相応しい女性に出会った。だから僕は先へ進むよ。僕は妥協しない性格なんだ、もっと良い人がいるのに付き合いでいつまでも君といるなんてことはできやしない」

 まぁべつに好きにしてもらえばそれでいいのだが。

「悪いね、伝えるのが急になってしまって」
「いえ」
「……今悔しいかい?」

 彼はそう尋ねて期待したような目をした。

「残念ですが、その問いの答えはノーです」

 私にはかつて愛してくれた人がいた。その人は長男ではないものの王子だ。私とは少々身分違いだが、私を愛してくれていた。そして、大人の事情で私の婚約が決まった時にも「何かあったら力になるからね」と言ってくれた。もっとも、ガーランドと婚約してからは会っていないのだが。

「では私はこれで。失礼します」
「待って! 悔しいよね? 本当は悔しいけど隠しているんだよね!? 強がりだよね!?」

 ガーランドは色々言ってきたが、それらは無視した。

 もう他人になったのだ。
 話すことなどない。
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